Twitterの取締役会は米国時間4月25日、Elon Musk氏による買収提案を受け入れたと発表した。
どの観点から見ても「Elon Musk」というアイデンティティーは、他のアイデンティティーと同様、現実に存在してはいない。これは、プラットフォームの所有者が自らの権限を行使して定期的に並べ替え、ふるいにかけているデータベース内に存在している一連のテキストの断片に名前を付けたものでしかないのだ。
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4月に入り、Teslaの最高経営責任者(CEO)Elon Musk氏がTwitterに対して株式の非公開化を目的に買収を提案したというニュースが株式市場を大きく揺るがした。Musk氏はその際、同社の現マネジメントがTwitterのサービスに必要なことを遂行できるという確信が持てないと述べていた。
米証券取引委員会(SEC)に提出された書類に記されている、Twitterの取締役会長であるBret Taylor氏に宛てたMusk氏の書簡によると、Musk氏は2つの目標を有しているようだ。
まず、Musk氏はTwitterに対する自らの投資を気にかけている。同氏は現時点でTwitterの株式の9%を取得しており、その価値は30億ドル(約3800億円)に上る。同氏は、Twitterが「死にかけている」のではないか、そしてプラットフォームとして不可欠なものでなくなりつつあるのではないかという疑問をツイートしている。そして同氏は、そうならないようにするには大きな変革が必要だと主張している。
それと同時に、Musk氏はより高い目標を抱いている。同氏はTwitterを言論の自由を保証するためのプラットフォームにしたいと考えている。
Musk氏はTaylor氏に宛てて「私がTwitterに投資したのは、このサービスが世界中の言論の自由を支えるプラットフォームになる可能性を確信したためだ。そして私は、言論の自由が民主主義を機能させる上での社会的責務だとも確信している」と書き、「しかし、この会社の現在の形態では繁栄も、社会的責務の全うも無理だということが投資してみて分かった。Twitterは非公開企業として生まれ変わる必要がある」と続けている。
Musk氏はその後、14日の「TED Talk」において、具体的な変革としてスパムボットの除去やTwitterのアルゴリズムのオープンソース化などを挙げた。
Musk氏は自らが所有するTwitter株の価値を高められるかもしれないが、2つ目の目標、つまりTwitterを言論の自由を実現するメカニズムにするという目標は達成できないだろう。「Facebook」や「Snapchat」「Instagram」「Pinterest」「LinkedIn」「TikTok」といった他のソーシャルメディアプラットフォームすべてと同様に、Twitterの骨組み自体が言論の自由を阻んでいるのだ。
ソーシャルメディアは参加者側による統制を許していない。個人はツイートや投稿で入力する内容や、ソーシャルメディア上での「いいね!」やその他のアクションの使用を統制できないのだ。すべてはソーシャルメディアプラットフォームの所有者によって統制されており、所有者はユーザーからの貢献を、自らが適切だと思えるよう気ままに並べ替え、ふるいにかけ、表示することができる。
そして、ユーザーによる統制が存在しないということは、ソーシャルメディアに参加している人たちにとって自律性は存在していないことを意味している。そして自律性がなければ、アイデンティティーもない。あるのはアイデンティティーの幻想だけだ。