松岡功の「今週の明言」

「日本社会のDX」に挑む牧島デジタル大臣の意気込み

松岡功

2022-04-28 10:53

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、デジタル庁 デジタル大臣の牧島かれん氏と、Google Cloud GM&VPのGerrit Kazmaier氏の発言を紹介する。

「世界で高い競争力を持つ日本であるために、社会全体でDXを進めていくことが肝要だ」
(デジタル庁 デジタル大臣、行政改革担当大臣、内閣府特命担当大臣(規制改革)の牧島かれん氏)

デジタル庁 デジタル大臣の牧島かれん氏
デジタル庁 デジタル大臣の牧島かれん氏

  デジタル庁 デジタル大臣の牧島かれん氏は、グーグル・クラウド・ジャパンが先頃オンラインで開催した年次イベント「Google Cloud Day:Digital ‘22」の基調講演にゲストで登場し、日本社会のデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた同庁の取り組みについてスピーチを行った。冒頭の発言はそのスピーチの中でデジタル庁トップとしての意気込みを示したものである。

 Google Cloud Day:Digital ‘22の内容については速報記事をご覧いただくとして、ここでは牧島氏の発言に注目したい。

 牧島氏は、日本に今、DXが必要とされている背景について、次のように述べた。

 「新型コロナウイルス感染症により、日本のデジタル化を巡るさまざまな課題が明らかになった。コロナ対策においては、データの取得・活用不足や給付金の支給事務に膨大な事務コストがかかり、給付の遅れも指摘された。また、ハンコ押印のためだけに出社しなければならないという実態が、報道でも繰り返し取り上げられて大きな話題になった。このように、民間企業も含めて従来のアナログ業務の一部のみをデジタル化した業務プロセスとなっており、エンドツーエンドでデジタル化に対応できていない。さらに、リモートワークなどの自由な働き方や効率化、生産性向上を阻害しているという状況が明らかになった」

 そして、こう続けた。

 「これまでインフラ整備としては、良質なICT環境が整った一方で、組織や業務の大胆な見直しや改革がなされていなかったことが、こうした状況を生んでしまったものと考えられる。世界で高い競争力を持つ日本であるために、一刻も早く、仕事のプロセス、働き方、暮らし方などを大きく変えるDXを社会全体で進めていくことが肝要だ」

 冒頭の発言は、このスピーチから抜粋したものである。デジタル大臣にはこれからも「社会全体でDXを進めていくことが肝要」と、声を張り上げて訴え続けてもらいたい。

 デジタル庁は4月26日にも事務方トップのデジタル監が交代するなど、発足以来およそ8カ月間ドタバタし続けているように見受けられるが、せっかくの機会なので期待したい動きを紹介しておきたい。

 高齢者などデジタルに不慣れな人たちを支援する「デジタル推進委員」を2022年度中に全国で1万人以上配置するという政府の方針に沿って、デジタル監の交代と同じ日に牧島氏が日本青年会議所など若手経営者を中心とした3つの経済団体に協力を要請したという動きだ。政府の方針については、本サイトでの筆者のもう1つの連載「一言もの申す」の2022年1月13日掲載「政府が『デジタル重点計画』で掲げた『誰一人取り残されない』施策は奏功するか」参照していただきたい。筆者はこの施策が日本社会のDX推進の“肝”だと見ている。牧島氏にはさらなる活躍を期待したい。

デジタル庁は4月26日、最高デザイン責任者(CDO)を務めていた浅沼尚氏(右)のデジタル監就任を発表した(出典:デジタル庁)
デジタル庁は4月26日、最高デザイン責任者(CDO)を務めていた浅沼尚氏(右)のデジタル監就任を発表した(出典:デジタル庁)

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    警察把握分だけで年間4000件発生、IPA10大脅威の常連「標的型攻撃」を正しく知る用語集

  2. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  3. セキュリティ

    「2024年版脅威ハンティングレポート」より—アジアでサイバー攻撃の標的になりやすい業界とは?

  4. ビジネスアプリケーション

    Microsoft 365で全てを完結しない選択、サイボウズが提示するGaroonとの連携による効果

  5. セキュリティ

    生成AIを利用した標的型攻撃とはどのようなものなのか?実態を明らかにして効果的な対策を考える

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]