京都大学の防災研究所は、台風による洪水などの災害解析における降雨流出氾濫モデル(Rainfall-Runoff-Inundation:RRIモデル)の自動化を目的として、「Microsoft Azure」を採用した。2021年1月に構築を開始し、同年7月に利用を開始している。日本マイクロソフトが発表した。
この研究分野では、台風で発生する河川の氾濫解析を行う際に、気象庁から届く観測や予測の降雨データを基に予測することからリアルタイム性が求められる。しかし、従来のオンプレミスのスーパーコンピューターではジョブの混雑状況などによってシミュレーションをリアルタイムに実行できない課題があった。
Azureの導入後、研究所では台風の発生時から刻々と変わる計算リソースの需要に「Azure CycleCloud」のオートスケールの機能で対応し、必要な時に必要なリソースを割り当てることが可能となった。
データフローは、気象庁から届く観測データをいったんオンプレミス環境に収集し、そのデータを「Azure Files」上に転送する。このデータを用いてRRIモデルで予測シミュレーションを実施すると、結果のデータも膨大になるが、クラウドサービスを活用することで扱えるようになった。
また、仮想マシンの起動・停止、ジョブの割り当てなどのシステムの管理では、CycleCloudで提供されている機能を簡単なシェルスクリプトを用いてフローの自動化を行っている。これにより100コア以上を並列的に使用した自動計算も実現できるようになった。
同究所では今後、シミュレーション結果の可視化もAzure上で行い、クラウドサービスを通じて一般向けに提供することも検討している。