海外コメンタリー

匿名性はデジタルワークフォースの秘密兵器

Greg Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2022-06-17 06:30

 仕事の形態が将来に向けて変化していく中、あらゆる企業がエンゲージメントやインクルージョンに関する新たなポリシーの検討を迫られている。そして、そうした企業が真剣な目を向けるべきものに匿名性がある。


提供:Getty

 職場ではエンゲージメントが重視され、雇用主が新たなデジタルワークフォース向けのベストプラクティスを模索する状況にあって、匿名性の検討は奇異に感じられるかもしれない。約2000人の米国人を対象として最近実施されたある調査によると、対面での会議とオンライン会議の双方について、71%以上もの回答者が匿名での参加手段を求めているという。また回答者の74%は、匿名での参加を可能にする会議ツールによって、意見に耳を傾けてもらいやすくなると感じているという。

 匿名性によって、意見に耳を傾けてもらいやすくなるというのは、どういうことなのだろうか?

 まず、リアルタイムでの会議において、参加者を前にして発言するということを苦手とする人々がいる。このような人々は、学校のクラスにいるおとなしい子どもと同様だが、集団の中で発言しない、あるいは内気だからといって、知性が劣っているわけではない。また、大きな声で素早く意見を述べられるからといって、その意見がコラボレーションの必要な環境で正しいものになるわけでもない。

 受動的な参加者を積極的な貢献者に変え、意見の吸い上げや伝達を容易にするためのオーディエンスエンゲージメントプラットフォームを手がけるMentimeterの最高経営責任者(CEO)であるJohnny Warstrom氏は、「会議は今まで、外向的な人たちのものだった」と述べた上で、「こうした人々は、会議の場で声を上げ、堂々と意見を述べることをいとわない。しかしそれでは、内向的だが同様に価値ある洞察やアイデアを有している人々による貢献を逃してしまうことになる。匿名性によって、もともと外交的ではない人々が支援され、より有意義な意見交換につなげられる」と説明した。

 ここでのアイデアは、匿名でのエンゲージメントによって、人々は見た目での判断や無意識のバイアスに振り回されることなく、自らの意見を自由に表現する機会を手にできるというものだ。

 Warstrom氏は「発言者の意見から、当人の人種や民族、年齢、性別といった背景を取り除けば、人々の参加意欲やエンゲージメントが高まるという知見が見いだされた」と述べた上で、「匿名性は、従業員のエンゲージメントに向けたダイバーシティーとインクルージョンの問題として捉えるべきだ。匿名での投票や質問、意見を可能にするツールによって、単に声の大きな人の意見だけではなく、あらゆる人々の意見を耳にすることができるようになる」と続けた。

 今回の調査は、この考えを裏付けるものとなっている。オンライン会議での発表や発言を苦にしている人の多くは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含む病気を理由にして欠席したことがあると述べている。約40%は病気を理由に、そして22%はCOVID-19への感染を、27%は病気になった家族やペットの世話を理由に会議での発表や会議への参加を忌避したという。

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