控えめに言っても、オーストラリアの中堅中小企業(SMB)はこの数年、困難な状況と向き合わざるを得なかった。だが、同国のSMBが強力なレジリエンスを備えていることを示すものがある。
先頃の調査で、オーストラリアとニュージーランド(ANZ)のSMBの57%が、生き残ることに注力する段階から、ビジネスの成長や変革を目指す段階に移行したことが明らかになった。この調査によると、オーストラリアのSMBの3分の2は2022年にIT支出を増やす準備をしているという。
「ANZのSMBの大多数が、将来を楽観視するようになった」とIDC ANZのITサービスおよびカスタムリサーチ担当シニアマーケットアナリストのEmily Lynch氏は語る。
「クラウド、コラボレーション、サイバーセキュリティが、ANZのSMBの投資における重要な柱だ。こうした投資により、生産性の向上、市場投入までの期間の短縮、新しいデジタルテクノロジーの活用といった成果を上げている。注目すべきは、SMBの売り上げにデジタルチャネルが占める割合が増加している点だ」
Amazon Web Servicesのテクノロジーおよびカスタマーソリューションズ担当バイスプレジデントのFrancessca Vasquez氏も同じ意見で、SMBによるクラウドとサイバーセキュリティのテクノロジーの採用が進むと考えている。
「クラウドへの移行を検討中のSMBは、学習、スキルの構築、高速化を可能にするユースケースも模索する。そうしたユースケースには、優れたセキュリティフレームワークを手に入れたいという基本的な用途から、IDの活用、バックアップと復元、単純な使用開始まで、さまざまなものがある」とVasquez氏は述べた。
「そこから、SMBの多くがデータや他の分析ベースのアプリケーションをクラウドに移行させる段階へと進む。これが非常によくみられる一般的なパターンだ」
Vasquez氏によると、大半のSMBでテクノロジープロジェクトを主導しているのは、創設者自身(まだビジネスに関与している場合)か、あるいは最高製品責任者(CPO)で、「この役職を設けるSMBが増加しつつある」という。
SMBの身軽さは、新しいテクノロジーを素早く採用できるという点で強みになる、とVasquez氏は語る。地域市場のパートナーと連携し、迅速に実験を進めて使用を促進できる場合は、特に有利だという。
「当社のSMB顧客の大多数は、製品の採用やユーザーの採用といった成果を検討する傾向があるため、少し違った考え方になることが多い。それによって、自分たちの能力において圧倒的に速く動けるのだと思う」(Vasquez氏)
SMBが新しいテクノロジーを採用するもう1つの動機は、政府による後押しだ。オーストラリア政府は最近の連邦予算において、より多くのテクノロジーに投資する小規模企業を支援すると発表した。小規模企業が経費や減価償却費をさらに20%控除されるようにして、携帯型決済デバイス、サイバーセキュリティシステム、クラウドベースサービスのサブスクリプションといったデジタル採用を支えるインセンティブを導入するという。
「政府と公共部門には、果たすべき役割がある。税制上の優遇措置以外に果たすことができる最大の役割の1つは、優良なSMB顧客の多くが、人材支援の素晴らしいハブにもなれるようにすることだと思う」。Vasquez氏はこのように述べた。
「われわれは未来の労働力について考えている。これからの5年〜10年に本当に必要とされる重要なスキルがいくつかある。政府は、SMBの人材育成を支援して人材への道筋を示すうえで役割を果たせると思う」
LastPass JAPACでID担当リードを務めるLloyd Evans氏は、このようなインセンティブを導入する政府の決定を、思慮深いアプローチと表現した。
「SMBの大部分はオーストラリア経済の原動力だ。SMBがサイバーリスクを軽減し、レジリエンスを高めて、デジタルサイバーセキュリティサービスのコストを相殺できるように支援すれば、オーストラリア経済だけでなく、SMB環境で事業を営む企業の助けにもなると思う」(Evans氏)
提供:Imaginima/Getty Images
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。