サイボウズは7月15日、メディア・アナリスト向け勉強会「『変化し続けられるDX』を支えるIT部門のためのガバナンスガイドライン 作成と活用のキーポイント」を開催した。今回で10回目となる。
同社のノーコード/ローコード開発実行基盤「kintone」を利用するユーザー企業向けに、デジタルトランスフォーメーション(DX)実現のポイントをまとめた「kintoneガバナンスガイドライン」を作成し、今回の勉強会も同書の内容に沿って進められた。
サイボウズ 事業戦略室 兼 営業戦略部 山田明日香氏
サイボウズ 同社事業戦略室 兼 営業戦略部 山田明日香氏は、ユーザー企業のIT部門やDX部門に在籍する担当者から「『独自作成に着手していたが参考になる』『ガバナンス策定時の比較に使えそう』『運用ルールの見直しに活用したい』などポジティブな反響をいただいた」と説明、「IT部門やDX部門が社内ルールを策定する際の参考にしてほしい」と利用場面を説明した。同書は同社サイトから無償でダウンロードできる。
「ガードレールのようなガバナンスが必要」
企業のITにまつわる課題は少なくない。IT人材不足と相反するDX推進の波は加速し、現場部門によるノーコード/ローコード開発の重要性に注目が集まっている。
その理由として山田氏は「現場が求めているものと、システム性能にギャップが生じている。さらに従来はIT部門が現場(部門)の要望を取りまとめていたが、限られたIT人材で応えるのは難しい。だからこそ現場部門が欲しいものは自ら作る」潮流が広がりつつあるからだと説明した。
kintoneはGUI操作で部品を配置するノーコード開発やプラグインの追加、現場の需要に応じて個別対応するローコード開発が可能だ。現在の契約社数は2万5000社(2022年6月時点)、導入担当者は非IT部門が93%を占める(2021年12月末時点の契約企業)。
導入企業としては、申請承認業務や回覧業務をデジタル化した日清食品グループ、POSシステムやEC基幹系システムを連携させて、商品の自宅配送や店頭受け取りにkintoneを用いるアルペンの名前が並ぶ。
ノーコード/ローコード開発による業務のデジタル化は企業規模にかかわらず広まりつつあるが、各企業担当者からは「『大量(作成した)アプリケーションの管理』『リスクの高いデータ管理』『熟練度の低いメンバーに対する教育』といった声が聞こえてくる」(山田氏)という。
ノーコード/ローコード開発が広まる中、IT部門に求められるのは「自社に即したガバナンス」(山田氏)である。業務の課題を理解している現場部門が開発に携わることで、即時的な動きや柔軟な対応が可能になるものの、担当者の異動や退職による属人化、野良アプリケーションの乱立、情報漏洩など多くのリスクが生じてしまう。
だが、「利用範囲を狭めるとDX推進を阻害」(山田氏)することから、サイボウはkintone導入企業や外部アドバイザーとともに、kintoneガバナンスガイドラインの作成に至った。作成背景には、2020年から活動を開始したkintoneの大企業向けコミュニティー「kintone Enterprise Circle」の存在も大きいという。現在は約20社が所属している。
今回の勉強会でサイボウズは観光系サービス業の星野リゾートと、自動車部品の開発から販売までを手掛けるジヤトコ2社によるkintone運用事例を披露した。
星野リゾートは全社員のIT人材化を目指しており、kintoneを現場の業務改善、基幹システムとの連携も含めた全社活用に利用しているが、前述したノーコード/ローコード開発の課題が表面化。だが、同社担当者は「ある程度(開発環境を現場が)自由に利用しながらも、大きく道を踏み外さずに方向性を示す『ガードレールのようなガバナンスが必要』だと考えた」(山田氏)
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