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ベトナムIT大手のFPT Softwareが日本市場で年30%成長を計画

田中克己

2022-08-19 07:00

 ベトナム最大手のIT企業とされるFPT Softwareが日本市場の売り上げを年平均30%で伸ばす計画を立てている。2022年1月に日本法人FPTジャパンホールディングスの代表取締役社長に就任したDo Van Khac(ド・ヴァン・カック)氏が明らかにした。2022年1~6月の売り上げは前年同期比で26%増となっており、2022年度通期の最大目標33%を達成すれば、約350億円の規模になる。

 日本法人の成長戦略として、請負開発やアウトソーシングに加えて、ソリューション提供にビジネスの幅を広げる。同氏は「オフショアのIT企業が技術的に優れるソリューションを提供するのは自然なこと」と語り、日本でソリューションを展開する背景を説明する。

 1つ目は、ユーザー企業が技術的に不足している部分をソリューションとして提供する点。ユーザーの指示通りの開発を請け負うだけではないという。2つ目は、ユーザー企業との直接取引が増えている点で、数年前までは大手IT企業からの請負が多くを占めていたが、最近はユーザー企業の割合が約6割に達するようになった。特に内製化を推進するユーザー企業に、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)などのテクノロジーやソリューション、プラットフォームを提供したり、計画段階から入り込んで概念実証(PoC)を支援したりする。3つ目は、日本政府による「Society5.0」の推進で、社会問題をテクノロジーで解決する取り組みによってデジタル変革(DX)のニーズが高まっているという。

FPTジャパンホールディングス 代表取締役社長 Do Van Khac(ド・ヴァン・カック)氏
FPTジャパンホールディングス 代表取締役社長 Do Van Khac(ド・ヴァン・カック)氏

 同社はそうした日本のユーザー企業らにベトナムで構築、支援したDX関連のソリューションを提案する。「ベトナム政府は社会から経済、教育、ヘルスケアなどあらゆる分野のDXに取り組んでいる」(同氏)。ベトナムのFPTはその構築や支援を数多く手がけてきた実績がある。例えば、ヘルスケアの領域では「eHospital」という遠隔診断などの機能を備える病院向けソリューションがある。

 患者が診察後に薬剤を受け取るための仕組みもある。約4年前にFPTグループの傘下に入ったドラッグストアのLong Chauが病院の診断と連携し、薬剤を提供する。Long Chauは全国に約700店舗を持つ。新型コロナウイルス感染症に対応するソリューションでは、コロナ患者の症状などのデータを管理し、どの地域で発生するかを予測する。AIを使って患者の症状を確認したり、アドバイスしたりする自動コールシステムも提供する。

 このほかにも、AI関連ソリューションとして、エンドツーエンドの機能を備えたビジネスインテリジェンス(BI)やSaaS型需要予測、声紋認証などをそろえている。

 同氏は、ソリューション提供における同社の優位性を3つ挙げる。1つ目はソリューションの提供時で、単にソリューションを販売するだけではなく、ユーザーと一緒に新しいソリューションを開発したり投資したりする。開発したソリューションは、FPTとユーザーの両者が所有権を持ち、それぞれが活用する。

 2つ目は、ベストなリソースを最適なコストで提供すること。「オフショアとニアショアを組み合わせたベストショアで、例えばセキュリティなどの課題を解決する」という。3つ目は、対応のスピードにある。約2万5000人の技術者を確保し、最適な人材配置と開発速度を速めることだ。

 日本法人は技術者の採用と育成に力を入れており、2022年度に約500人を採用する計画。既に300人を採用し、日本の陣容は1850人(2022年7月時点)になる。SAPコンサルタントをこの1年に約150人育成したり、「SAP ERP」や「Microsoft Dynamics」などの導入を早めるテンプレート作りに取り組んだりしている。

 問題は、IT人材不足の日本では採用が難しいこと。そこで同社は「Go Japan」という掛け声の下、ベトナムの技術者を日本に送り込む。採用に当たっては技術者だけではなく、その家族にも日本語教育を提供する。家族の仕事や子供の学校を紹介するなど、安心して働ける環境を用意する。その一方、ベトナム人以外の技術者も増やす。現在の約20%の割合(日本人が16%、インドや中国など他国が4~5%)を、いずれ30%程度にしたいという。

 技術者の育成・確保については、日本のIT企業との資本業務提携などもある。こうした連携の形態には3つのパターンがある。

 1つ目はIT企業との戦略提携で、パートナー関係としてユーザー企業を開拓していく。2つ目は、相互に投資することで共に発展する連携になる。3つ目はFPTに必要な特定のスキルやノウハウを持つIT企業との連携で、ロジスティクス(物流)などの業務知識や上流工程などのスキルが挙げられる。

 これまで、エル・ティー・エスやスマートホールディングスなど数社と資本業務提携や合弁会社を設立しており、さらに増やしていく考えだ。「1社当たりのビジネス規模は最大10億円程度だが、パートナーとの協業で50億円程度に増やしたい」(同氏)

 実は、コロナ禍に日本法人の売り上げは成長が鈍化し、本社の総売上に占める割合が58%から2021年度に38%(270億円)まで下がった。米国やアジアが大きく伸びたのに対して、日本が伸び悩んだからだ。その挽回策が年30%成長という高い目標設定になる。

 2002年にソフトウェアエンジニアとして、FPT Softwareに入社した同氏は、ベトナムの技術者を使ったコスト訴求型のビジネスモデルから、技術力とソリューションなどを生かすことでどのようなビジネスモデルを創り出そうとしているのか注目したい。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任、2010年1月からフリーのITジャーナリスト。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書は「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)。

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