海外コメンタリー

セールスフォースの「AI Economist」--経済の平等と生産性の均衡を目指す人工知能

George Anadiotis (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2022-08-22 06:30

 Salesforceにとって2016年は転機の年だった。同社はこの年、人工知能(AI)関連の新興企業MetaMindを買収したのだ。MetaMindの共同創業者であるRichard Socher氏はMetaMindのプラットフォームについて、「医療画像や電子商取引画像、自然言語処理(NLP)、そしてその他多くの分野で機能するエンタープライズ向けAIプラットフォーム、つまり開発者向けの機械学習(ML)ツールとして機能する水平型のプラットフォーム」だと語っていた。

Salesforceのロゴ
提供:monticello -- Shutterstock

 同氏の語った内容が今日のわれわれの興味を引くというのであれば、その言葉は時代の先を見据えていたということになるだろう。MetaMindがSalesforceに買収された結果、Socher氏はSalesforceのチーフデータサイエンティストとして、同社の大規模かつ影響力の大きなアプリケーションに取り組む100人を超えるリサーチャーと、数百人に及ぶエンジニアを率いることになった。そしてAIは、SalesforceのプラットフォームにAI機能を取り込むための広範なイニシアチブである「Salesforce Einstein」を主軸として、同社の取り組みにおける中心的な役割を果たすようになった。

 Salesforceは市場指向の取り組みと並行して、「AI for Good」(AIの社会貢献)というイニシアチブを支援してもいる。このイニシアチブには、同社が壮大な構想と位置付けているもの、すなわち現実世界における最適な経済ポリシーを学習するAIの社会的プランナーを構築するという構想が含まれている。「AI Economist」という名のこのプロジェクトは最近、新たな研究結果を公開した。Salesforceのシニアマネージャーとしてリサーチサイエンティストのリード兼AI Economistチームのリードを務めるStephan Zheng氏が今回、同プロジェクトの背景や成果、ロードマップについて語ってくれた。

経済ポリシーのツールとしての強化学習

 Zheng氏はディープラーニング(DL)が大きく開花した2013年頃、物理学の博士号取得に向けて取り組んでいた。同氏はSalesforceにおける自らの作業の動機は2つあるとし、それらは「汎用的な知性の原則を見つけ出すためにMLの限界を押し上げることと、社会貢献を実現することだ」と述べた。

 Zheng氏は、現代における最重要課題が社会経済に関するものだと考えている。このリサーチに同氏が引きつけられたのは、経済の不平等さによってもたらされる経済機会や健康、社会福祉への悪影響が、ここ数十年で加速してきているためだ。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]