JR東日本とKDDIは1月11日、人工知能(AI)で防犯カメラの映像データを分析し、配送ロボットが自動で混雑回避や回遊販売を行うフードデリバリーサービスの実証実験を実施すると発表した。同実証は1月11~27日、「JR目黒MARCビル」で行われる。
実証では、(1)ロボットによる弁当の配送、(2)菓子の回遊販売、(3)ロボット同士の協調制御を検証する。両社は、ビル設置の防犯カメラなどに蓄積されるデータをAmazon Web Services(AWS)クラウド上で収集・分析するデータ連動基盤「都市OS」と、ロボットの位置情報管理や走行の制御、設備との連携を行う「ロボットプラットフォーム」をつなげ、ロボット単独ではできなかったサービスの実現と利用者の需要に対応する環境の構築を目指すとしている。
ロボットによる弁当の配送では、ユーザーが勤務するフロアまで、指定した時間通りに届けることを検証する。都市OSがAIで防犯カメラの映像をリアルタイムに解析することで、配送ロボットは人の密集度が低いルートを選択し、衝突を回避するという。一方菓子の回遊販売では、密集度が高いルートを選択し、効率的な販売を図る。
ロボット同士の協調制御では、メーカーが異なる複数ロボットの位置情報をロボットプラットフォームで共有し、各ロボットの優先順位を決めておくことで、他のロボットとの衝突を避ける。実証では、ZMPの配送ロボット「DeliRo」とセントラル警備保証の警備ロボット「C-SParX」を利用し、配送ロボットの走行を優先させる。そのほか、ロボットプラットフォームとエレベーターを連携させることで、配送ロボットが自動でエレベーターを利用し、異なるフロアへ配送する。
同実証は、JR東日本とKDDIが取り組んでいる一人一人の暮らしを軸にした分散型の街づくり「空間自在プロジェクト」の一環として実施する。JR東日本の担当者は「鉄道ネットワークを持つ当社と通信ネットワークを持つKDDIがタッグを組み、新しい暮らしを実現することを目指している」と説明した。
両社は高輪ゲートウェイ駅周辺を「高輪ゲートウェイシティ(仮称)」とし、同プロジェクトの核となる街として位置付ける。高輪ゲートウェイシティでは、配送や警備、清掃、案内など各業務に特化したロボットが稼働し、全てのロボットがロボットプラットフォーム上で連携することを描いている。こうした取り組みの背景には、警備や清掃といった業界の人手不足や、コロナ禍に伴う個食への移行があるという。今回の実証では、配送業務・ビル内に限定して仮説を検証する。
実証では、JR東日本が食事提供サービスの設計、ロボットとエレベーターの連携、AIによる画像解析結果の活用、警備ロボットの運用、KDDIが都市OSの開発、ロボットプラットフォームの企画、防犯カメラのデータ解析、配送ロボットの運用、フードデリバリーサービスのアプリ開発を担当する。配送ロボットの実用化は、2025年3月の高輪ゲートウェイシティの街開きに合わせて行われる予定。
同日に開催された説明会では、配送ロボットの実演が行われた。実証で検証されるロボットによる弁当の配送・菓子の回遊販売、ロボット同士の協調制御などの様子をお伝えする。