大日本印刷(DNP)は5月31日、OpenX Technologies(OpenX)と協業を開始したと発表した。両社は、デジタル広告配信の過程で発生する二酸化炭素(CO2)排出量を計測する取り組みを進め、DNP独自の広告取引経済圏「DNP Marketplace」と組み合わせて、より環境負荷の低い広告設計を提案するサービスを6月から順次提供する。
インターネット上に表示するデジタル広告は、世界の温室効果ガス排出量の3.7%を占めているという。デジタル広告の主流は現在、広告主の要望に応じて、リアルタイムかつ自動でインターネット上の広告枠を買い付けて表示するプログラマティック広告だが、その過程において、データの処理やコンテンツの配信などで使用されるサーバーの稼働や、膨大な通信量などでエネルギーを消費している。
プログラマティック広告では、広告主のニーズを管理するプラットフォーム(DSP)と、媒体社のウェブサイトと広告枠を管理するプラットフォーム(SSP)の間で広告取引が自動で行われている。DNPは、OpenXが提供するNet-Zero SSPプラットフォーム「Green Media Product」と連携し、そこで発生する通信量に基づきCO2の排出量を計測する。このプラットフォームを利用することで、広告主はPMP(Private Market Place)広告取引を活用して、発生するCO2の排出量を計測、カーボンオフセットに取り組めるようになるという。
DNPが提供する環境配慮型デジタル広告サービスとその特長
DNPでは今後、「OpenXによるCO2計測とレポート」の提供や、ターゲティング広告、クリエイティブの種類などの削減、PMP取引の拡大など、サービスを展開するという。
OpenXによるCO2計測とレポートの提供では、Green Media Productと連携し、そこで発生する通信量に基づきCO2の排出量を計測し、そこからサプライチェーン全体のCO2排出量を想定して削減案を提案する。計測は、広告案件ごとに行い、毎月のレポート提供とともにCO2削減に向けた顧客への継続的支援を実施する。
さらに個々のユーザー状況に応じて適切な広告を配信するターゲティング広告や、多様なパターンのクリエイティブ配信、同じユーザーへの同一広告の配信(フリークエンシー)などについて、その効果を見直し、年間で約10%程度削減するという。
PMP取引は効果の高い媒体社を優先的に選定して行う広告入札取引のことで、通常のオープンオークション(多様な広告媒体とリアルタイムに自動で行う広告入札取引)と比較して、大幅に通信量を削減できる。また、DNPと取引実績がある出版社を中心に運営される優良媒体へ優先的に広告在庫を配信するDNP Marketplaceの活用を促進することで、CO2排出量を抑制するとともに、良質な潜在顧客の獲得を支援する。
そのほか、炭素除去プロジェクトのクレジット購入(寄付)の促進や脱炭素社会の実現に向けた子どもたちへの啓発施策などにも取り組んでいくとしている。
また、第三者機関との連携により、サプライチェーンにおけるCO2の計測ポイントを増やすなど、サービスを強化していく。さらに環境配慮型の広告設計によるCO2削減と、広告主のコンバージョン率の両立に関する実証実験を行う予定だ。