さまざまなベンダーが自社の生成人工知能(AI)サービスの普及を急いでいる一方、企業は予想外の出費が発生する事態を回避しようとしており、生成AIサービスの価格体系の明確化が求められている。
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Tech Research Asiaの創業者であり、ディレクターを務めるTim Dillon氏は、企業は予想外のコストの増大を懸念しており、生成AIサービスに対して、利用方法と課金モデルに関する透明性を求めていると話す。企業には、クラウドが普及し始めた時期に従量制のサービスモデルで予想外の請求が発生して悩まされた経験があるため、この種の問題に対して忌避感を持っていると同氏は指摘した。
米国時間9月11日からサンフランシスコで開催されたSalesforceのイベント「Dreamforce 2023」の場で米ZDNetのインタビューに応じてくれたDillon氏は、Salesforceをはじめとするベンダーは、生成AIサービスを充実させて行くのと並行して、この問題を解決する必要があると述べた。
組織内での生成AIツールの利用は有機的に増えていく可能性があり、ツールの利用状況が把握できなかったり、十分に管理できなかったりする事態が起きかねない。また、生成AIの利用ポリシーが存在しないことも多く、調査によれば、日本では、企業の60%がこうしたツールに関する正式なポリシーを持っている一方で、40%は非公式なポリシーしか持っていないと同氏は言う。
景気の悪化を受けてアジア太平洋地域の企業が予算を削減しつつあるため、予想外の出費に対する警戒感はますます強くなっている。また、価格がドル建ての場合、アジア太平洋市場の一部の企業にとっては、生成AIの利用が割高に感じられる可能性がある。
SalesforceのASEANソリューション担当バイスプレジデント兼最高技術責任者(CTO)であるGavin Barfield氏は、企業が予想外の出費を警戒するのは当然だと認めつつ、生成AIサービスはまだ展開され始めたばかりであり、料金体系に関するトレンドがしっかり定まっているわけではないと述べた。
「どの企業もまだ取り組みを始めたばかりで、こうした問題に頭を悩ませているところだ」とBarfield氏は言う。同氏は、クラウドサービスが展開され始めた当初にも、同じ問題が生じたと指摘した。
Barfield氏は「市場と製品が成熟してくれば、こうした問題も解決するだろう」と述べ、市場の主なベンダーは、生成AIサービスに対する価格設定の仕方を見つけていく必要があると付け加えた。同氏によれば、Salesforce自体もさまざまな価格体系を検討しているが、今のところ、いくつかのサービスでクレジットベースのシステムを採用しているという。クレジットの消費量は、AIモデルにクエリーを実行させる際の呼び出し方に依存する(訳注:クレジットベースの課金システムとは、サービスや製品の利用料金が「クレジット」単位で計算されるような仕組みを指す。ユーザーはあらかじめ一定量のクレジットを購入または取得し、そのクレジットを消費してサービスや機能にアクセスする)。
Salesforceは7月に、1ユーザー当たり月額50ドル(日本では6000円)で提供されている「Sales Cloud Einstein」に「Sales GPT」のサービスを追加し、このサービスを利用する際に使用する「Einstein GPTクレジット」を一定量付与すると発表した。Service Cloud Einsteinに同時に追加された「Service GPT」も同様の仕組みで、Einstein GPTクレジットを消費してこのサービスを利用する。
これらの生成AIサービスの利用量が増えた場合、ユーザー企業は「Enterprise Expansionパック」を購入してクレジットを買い足すことができる。