トレンドマイクロの子会社で自動車のサイバーセキュリティ事業を手掛けるVicOneは9月26日、本社機能を台湾から日本に移転すると発表した。トレンドマイクロのリソースを生かして事業を拡大するという。
VicOneは、トレンドマイクロが100%出資する子会社として2022年6月に台湾で設立された。従業員は約100人で、米国とドイツ、韓国、インドに拠点を持つ。自動車搭載機器の侵入防御システム(自動車用IPS)と脆弱(ぜいじゃく)性管理、自動車搭載装置への侵入検査、車載機器のデータ保護、自動車のセキュリティ監視センター(自動車用SOC:VSOC)の製品とサービスを展開している。
VicOneの自動車向けサイバーセキュリティのポートフォリオ
同日に記者会見したトレンドマイクロ 最高財務責任者のMahendra Negi氏によると、同社では、長らくIoT分野や自動車分野のサイバーセキュリティ技術も研究しており、自動車のサイバーセキュリティ事業は、IoT分野と性質が異なるために、VicOneを設立したという。今後のVicOneの事業拡大で、トレンドマイクロの事業リソースも活用するためにVicOneの本社機能を日本に移転したとし、Negi氏がVicOneの会長職を兼務することも発表した。
トレンドマイクロ 最高財務責任者のMahendra Negi氏
また、VicOne 最高経営責任者のMax Cheng氏は、日本に本社機能を移転することで、トレンドマイクロの事業リソースを生かしながら、事業のグローバル展開を強化できると説明した。自動車業界では、国連欧州経済委員会 自動車基準調和世界フォーラム(UNECE WP29)の自動車セキュリティ基準や、自動車サイバーセキュリティ管理システム基準の「ISO/SAE 21434」への準拠が求められていること、また、電気自動車(EV)や自動走行車の進化と普及に伴うソフトウェアベース制御でのサイバーセキュリティリスクの高まりがあり、自動車サイバーセキュリティ市場の拡大が見込まれている。
VicOne 最高経営責任者のMax Cheng氏
Cheng氏は、自動車関連の製造企業やIT企業ともエコシステムを形成しているとし、今回の日本への本社移転で、日本のこうした企業との協業をより強化できるとした。既に富士通とはVSOC、日立 Astemoとはエンジン制御装置(ECU)に実装するIPS、パナソニック オートモティブとは車載装置の仮想化基盤のセキュリティ技術で協業している。
また、トレンドマイクロが旧Hewlett Packard(現HPE)からTippingPoint事業を買収した際に運営を継承した脆弱性ハッキングコンテスト「Pwn2Own」については、2024年1月24~26日に東京で開催する次回大会から自動車専門イベントに変更することも明らかにした。