まだ始まったばかりの段階ではあるが、人工知能(AI)は、開発部門と運用部門の連携や、これらのチームと事業部門との連携のあり方を変えようとしている。最終的には、それによって生産性が向上し、仕事に対する満足度が高まり、ITプロフェッショナルがより戦略的な役割を果たせるようになるはずだ。
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繰り返すが、この変化はまだ始まったばかりだ。しかし、すでにかなりの数のITプロフェッショナルが、もっと重要な仕事に割けるはずの時間を食いつぶしている日常業務を処理するためにAIを利用し始めている。Google CloudのDevOps Research and Assessment(DORA)チームが最近発表したレポートによれば、回答者の約35%がデータ分析にAIの価値を見出しており、ほぼ同数がセキュリティ向上の手段としてAIを捉えているという。また世界のITプロフェッショナル3万6000人から得られたデータを分析したこのレポートでは、回答者の約30%がAIはログの分析やバグの特定に役立つと考えていることも分かった。一方、現時点では、AIがチームメートとの共同作業を促進する技術だと考えている人は20%強に過ぎなかった。しかし、この状況は変わるかもしれない。
これは、AIの導入範囲が企業全体に拡大するにつれて、開発部門と運用部門、そして事業部門が必要とする高次元の連携作業を促進し、これらの部門の距離が近づくようになるはずだからだ。
Amazon Web Servicesの「Amazon CodeWhisperer」担当ゼネラルマネージャーであるDoug Seven氏は、「各部門が一緒に仕事をする際の摩擦が減れば、相手の要望に早く応じられるようになり、お互いに忍耐強い態度で接することができる」と述べている。「AIによってビジネスプロセスが改善されれば、各部門がもっと連携してビジネス目標に取り組めるようになる。それだけでなく、開発者の生産性が高まれば、製品を市場に投入するまでの時間が短くなり、アイデアを早く製品化できる」
Seven氏はまた、AIは、生産性の改善や、知識の共有、コラボレーションを促進するアプリケーションを改善するため、「時間のかかる面倒な業務を自動化したり、合理化したりできる」と付け加えた。Googleの調査結果が示しているように、開発者はすでに、セキュリティやログの分析、バグの特定などの作業をこなすために、AIの利用範囲を拡大している。
Capgeminiのシニアディレクターを務めるVinay Karaguppi氏は、AIが面倒な作業を不要にしてくれれば、「従業員は創造性や共感を必要とする作業に集中できるようになる」と述べている。「AIを慎重に導入すれば、情報サイロが解体され、各部門の間で足並みがそろい、理解が深まり、共感を持って懸念事項に対処できる」
Karaguppi氏は、そうなれば、ソフトウェアのコーディングや、テスト、ビルド以上の特別なスキルがもたらされると続けた。「知恵と思いやりを身に付けたリーダーは、つながりを強める上で重要な役割を果たす。思慮深くAIを導入すれば、協調的な職場環境を作れる」と同氏は話した。
AIを使用したアプリケーションの中には以前から市場に出回っているものもあるが、それらは「AIを使って業務を合理化し、チームの連携を助けてくれる」とSeven氏は言う。「AIが組み込まれたアプリケーションは以前から出回っていたが、多くの人は、最近になってAIが話題になるまで、よく使われているツールやサービスにAIが使用されていることに気付いていなかった」。Seven氏が働いているAmazonは、AIを使用したツールを20年以上前から開発してきており、例えば、顧客に提供しているレコメンデーションエンジンや、倉庫ロボットなどにAIを使用している。