フォーティネットジャパンは12月1日、記者説明会を開催した。米Fortinetの創業者で取締役会会長 兼 CEO(最高経営責任者)のKen Xie(ケン・ジー)氏と、7月にフォーティネットジャパンの社長執行役員に就任した与沢和紀氏が事業方針などを紹介した。
米Fortinetの創業者で取締役会会長 兼 CEOのKen Xie氏
Xie氏は、まずサイバーセキュリティ市場のトレンドを挙げ、「ネットワークとセキュリティの融合」「セキュリティ運用の統合」「セキュリティビジネスの消費型サービス化」の3つがあるとした。
IT調査会社の予測では、将来にセキュリティ製品の市場規模がネットワーク製品市場を上回り、両者が一つに近づいていくという。セキュリティ運用では、異種混在のセキュリティ対策の運用が煩雑であり、これらを統合化して運用改善を図る需要が高まっているとする。セキュリティビジネスの消費型サービス化では、マネージドセキュリティサービス事業者(MSSP)によるセキュリティサービスの拡大があるとしている。
Xie氏は、Fortinetがこのトレンドに沿った製品・サービス、戦略に取り組み続けてきたと強調。同社はセキュリティアプライアンス製品を中核としており、同氏は、ハードウェア面で独自設計のASICの実装による処理の最適化と高速化を図り、ファームウェアの「FortiOS」で多様化するセキュリティ機能を拡張するアプローチで、単一プラットフォームによるシンプルな運用性とコストパフォーマンスの高さが顧客に支持されているなどと述べた。
独自ASIC搭載のアプライアンスの性能や省エネルギー性は、業界製品の平均より優れていると強調する
独自ASICやFortiOSの最新世代は、十数種類のセキュリティ対策機能を提供しながらも、高スループット、低消費電力を実現しているという。Xie氏は、これにより企業や組織のセキュリティ対策運用の効率化や自動化に加え、地球温暖化抑止などの観点でも寄与するとアピールした。また、製品防御力の土台となっている脅威分析では、約10年渡ってAI/機械学習を活用しており、毎日数十億件の脅威関連データを解析して、サイバー攻撃などの脅威に対処しているとした。
さらにXie氏は、2021年に買収したアラクサラネットワークスの研究開発・技術力などのリソースをFortinetのグローバルビジネスでより活用していく方針も明らかにした。「Fortinetにとって日本市場は2番目に事業規模が大きく、アラクサラネットワークスの買収が重要な取り組みになる。外資系(のセキュリティ)ベンダーにとって、製品の開発や品質の向上に不可欠な拠点を日本で確保できたのは大きい。日本市場の声を製品やサービスに反映させることができる」と説明している。
アラクサラネットワークスは、日立製作所とNECのネットワーク機器事業を母体とする。今後はFortinetのグローバルビジネスの重要リソースと位置づける
日本での事業戦略について与沢氏は、「セキュリティドリブンネットワーク」「ゼロトラストとクラウドからOT(制御系システム領域)の総合対応」「ネットワークとセキュリティの融合」「顧客との関係強化・パートナーサポート」の4点を挙げた。SD-WANや高性能セキュリティアプライアンス、セキュアアクセスサービスエッジ(SASE)、OTセキュリティなどが軸になり、顧客との直接対話やサポート、パートナーおよびMSSの関係の強化を掲げる。
フォーティネットジャパン 社長執行役員の与沢和紀氏。NTT出身で、米スタンフォード大学留学時代にXie氏と学友になり、その縁でフォーティネットジャパンに入社したという
ネットワークとセキュリティの融合は、アラクサラネットワークスとの事業面の連携が焦点になる。与沢氏は、2024年初頭よりフォーティネットジャパンとアラクサラネットワークスの方向性を両社の社内に説明していくとし、まず営業と技術で両社一体の事業活動体制にするという。その後は人事交流などを深めつつ製品開発体制などを強化し、2年程度をかけて両社の融合を進めたいとした。
フォーティネットジャパンの事業方針