Microsoftと米パシフィックノースウェスト国立研究所(PNNL)は米国時間1月9日、AIとハイパフォーマンス コンピューティング(HPC)を活用したエネルギー貯蔵と材料発見の分野における3カ年の共同研究を開始すると発表した。バッテリーにおけるリチウムの使用量を大きく削減するための新材料の候補を高速に検証したという。
この協業では、米エネルギー省傘下で化学や材料科学などの研究開発を行うPNNLと、MicrosoftのQuantumチームが連携し、エネルギーの安定供給や持続可能な材料の開発を目指すという。候補となる材料の組み合わせなどは非常に膨大で、人間の手作業による検証には多大な時間を費やすことから、これにAIとHPCを活用するとしている。
バッテリーの新材料候補を検証する取り組みでは、世界的に需要が高まり続けていながら希少資源となるリチウムの使用量を減らすことを目的にした。Microsoftの「Azure Quantum Elements」を用いて3260万種類の無機材料の候補からAIの推論やHPCによるスクリーニングを通じて研究者による評価を行い、80時間程度で候補を18種類に絞り込むことに成功したという。
米エネルギー省の予測では、リチウムイオンバッテリーの需要が2030年までに現在の5~10倍に増加する一方、リチウムは推定埋蔵量が少なく、採掘には地政学的な影響を受ける恐れがあるため、安定的な供給を可能にする新材料が必要になっているという。今回の検証による新材料が実現すれば、リチウムの使用料を約7割削減できる可能性があるという。
AIとHPCを使ったバッテリー新材料候補の絞り込み過程(提供:Microsoft)