NECは、整理されず不規則に配置された物品に対し、精密なハンドリング作業が可能なロボットAI技術を開発したと発表した。物品や障害物に隠れている領域や、ロボットの動作結果を予測することで、従来に人手で行っていたハンドリング作業をロボットで代替することができるという。
ロボットによる精密なハンドリング作業のイメージ
開発した技術の特徴
今回開発した技術は、(1)多様な形状の物品に対して精密な動作を最適な順序で自律的に実行する、(2)隠れて見えない物品を予測しながら動作する――という2つの特徴がある。
(1)では、映像データからロボット動作に対する多様な形状の物品の動きを高精度に予測するモデルを学習し、「押す」「引く」といった精密動作を実行させることができる。また、作業環境に応じた適切な動作順序を高速に生成することで、「置いて、押す」「引いて、取る」といった複数の動作の組み合わせを自律的かつリアルタイムに実行できるとしている。
これまでのロボット制御は、「押す」「引く」といった動作について、「つかむ」「置く」といった動作に比べ、動作や物品形状の僅かな変化で物品の動きが大きく変わるため、高精度に実行させることが困難だった。また、考慮する動作の種類が増加すると、動作の組み合わせや順序が複雑になり、リアルタイムに計画することにも課題があったという。
(2)では、ラベル付けが不要な「教師なし学習」を実現し、隠れた物品形状の予測モデルを効率的に学習させることが可能になった。この予測モデルによりロボットは、作業環境をカメラに映らない領域まで正確に予測し、ほかの物品や障害物と衝突することのない最適な動作を自動で生成できる。
世界モデルのロボットへの応用
今回開発した技術は、映像を物体単位で解釈する「世界モデル」を応用している。このモデルは、ロボットがある行動の結果として実世界で何が起こるかを、現実に試すことなく予測することを可能にする。これにより、ロボットが映像データから作業環境や自身の動作結果を高精度に予測する「時空間予測」と、それに基づいて最適かつ精密な動作を自動で生成する「ロボット動作生成」という2つの技術を開発できたという。
NECは、2024年度中に物流倉庫など人手による作業が多く残る現場でこの技術の実証を進めるとしている。