Mirakl(ミラクル)は2月21日、事業戦略説明会を開催した。同社は、ニトリホールディングス(ニトリ)がEC基盤の強化を目的にMiraklのSaaS製品を採用したと6日に公表している。説明会では、ニトリとみずほ銀行の担当者を招いて、Mirakl採用の背景が語られた。Mirakl日本法人 代表取締役社長の佐藤恭平氏は、「自由度を保ちつつ集客力を強化」するマーケットプレイスを第三の選択肢として注力するという。
売り手と買い手を結び付ける取り引き市場を指すマーケットプレイスモデルは、さらなるECビジネスの売り上げ向上で注目を集めている。Miraklによれば集客力は注目数が30%増、顧客生産価値は受注額が20%増、経営リスクの極小化は大手ECサイト売上比率の59%を占めるという。
ほかにも簡素な出品工程や配送業務代行など利点は多く、これらの状況を踏まえてMiraklはフランス本社で先行しているマーケットプレイス戦略に注力する。佐藤氏は「成熟のステージに立っている」とEC市場の新たな展開を評価した。
同社が提示したデジタルコーマス研究所の調査結果によれば、国内の消費者向け(BtoC)市場も右肩上がりで2022年には約140億円に達している。それでも佐藤氏は「米国と比較すると2018~2019年の状況で遅れをとっている。(背景には)リアルビジネスプレーヤーの意思参戦がある。また、(同社が躍進できたのは)コロナ禍の需要を正しく把握できた。われわれはビジネス変革を紹介するパートナーを目指したい」とさらなる日本市場の拡大指向を表明した。
確実視されるEC化率
他方で、ニトリはマーケットプレイスソリューションの強化を目指している。製造物流やIT小売業を手掛ける同社も、EC売り上げは2008年度は20億円、2018年度は390億円、2022年度は885億円と多大な成長を遂げてきた。ニトリ 常務執行役員の武井直氏によれば、「EC化率は2022年で11.9%。現在は20%まで押し上げる計画を立てている」という。
同社の売り上げは家具類が32%、接客や消費者販売などを指すホームファニシングエリアが58%、実店舗であるホームセンターが10%を占める。だが、約10年の成長率を見るとECが強い存在感を示し、「ITへの投資が欠かせない」(武井氏)ことから、2022年に新たなグループ企業としてニトリデジタルベースを設立。武井氏は「ニトリの人事体系ではIT人材の雇用が難しく、別会社を設立した」と述べながら、2032年までに現状の約3倍にあたる1000人の雇用を目指しているという。
ニトリが推進するEC基盤
ニトリがMiraklを採用した理由を武井氏は、「今からでは既存の大手ECサイトにかなわない。だが、(ECサイトの)目的を特化型にすれば集客と利便性向上につながる。“暮らし”を包括して品ぞろえを充実させたい。しかし、自社のスピードアップが難しい。多くのソリューションを調査したが、MiraklはEC刷新とマーケットプレイス導入に当たって、唯一の選択肢」だったという。
ニトリはMiraklのソリューションを背景に「暮らしの総合マーケット」を目指すため、販売チャネルや多様化、提供商品領域、ビジネス領域と各分野で成長・拡大を目指す。現在同社は家電商品に注力しているが、300万件の配送に対応する自社物流を活用して、自社商品とマーケットプレイス商品の配送サービスを行う予定だという。さらにリフォーム事業を通じて、エアコン取り付けや家具組み立て、家具移動などのサービス提供も予定している。
ニトリの商材拡大領域。現状の空白領域への進出を目指す