富士通、海中の生物や構造物の3次元形状データを取得する技術を開発

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2024-03-28 06:36

 富士通は、海洋の状態をデジタル空間に高精度に再現し、海洋を構成する環境の変化や海洋を活用した施策の効果などのシミュレーションによる予測を可能にする技術「海洋デジタルツイン」の研究開発を進めている。今回はその一環として、AIを用いて海中の生物や構造物の解像度が高い3次元形状データを取得する技術を開発した。

 これらの技術に関して、海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所と共に、沖縄県石垣島近海において実証実験を行った。その結果、サンゴ礁の精密な3次元形状データを取得することに成功し、技術の有効性を確認した。

SXを実現する海洋デジタルツインの構想
SXを実現する海洋デジタルツインの構想

 海洋デジタルツインで取り扱う測定データは、海藻、サンゴ礁などの海中の生物や、水産資源や海洋環境に影響を及ぼす構造物、植生分布や3次元形状などになる。これらを、自律型無人潜水機や衛星などを活用してデジタルデータとして収集し、海洋を構成する環境や生物の成長などの変化を数値シミュレーションするモデルを構築して、海洋に関する施策の事前検証に活用する。

AUV-ASV連結システムとデータ取得風景
AUV-ASV連結システムとデータ取得風景

 なお、データ取得には、海上技術安全研究所が開発した海中調査システム「AUV-ASV連結システム」を利用する。同システムは海中で自律型無人潜水機(Autonomous Underwater Vehicle:AUV)が撮影した画像を有線ケーブルで海上の自律型無人水上機(Autonomous Surface Vehicle:ASV)に送り、自律型無人水上機からWi-Fiで船舶へ送信する。

 富士通は2026年度中にブルーカーボン(沿岸・海洋の生態系に取り込まれ、貯留される炭素)の吸収量が多い藻場に関する海洋デジタルツインの確立を目指している。これを踏まえ企業・自治体などによる、藻場が吸蔵する炭素の見積りや藻場の保全・造成をする施策や、サンゴ礁における生物多様性を保全する施策などの立案を支援し、サステナビリティートランスフォーメーション(SX)を推進していく。

 今回開発した技術では、「画像鮮明化AI技術」と「海中3次元計測技術」が主要技術として利用される。

画像鮮明化AI技術によるサンゴ礁の精密な3次元形状データ化
画像鮮明化AI技術によるサンゴ礁の精密な3次元形状データ化

 画像鮮明化AI技術は 海中の被写体の色や輪郭を復元する。濁った海中での撮影により色が劣化して輪郭のぼけた画像でも、生物や構造物を高分解能で3次元化するために、海中の被写体に最適化した深層学習を利用する。画像鮮明化AI技術は、濁り除去と輪郭の復元を実現する2つのAIから成り、被写体本来の色を復元し、ぼけた輪郭を改善した画像を生成した上で3次元化する。

 分解能とは計測器などが有する物理量を識別できる能力のことで、計測対象のうち、見分けられる2点間の最小距離で表す。

水中LiDARによる3次元計測結果
水中LiDARによる3次元計測結果

 海中3次元計測技術は、移動中の自律型無人潜水機からリアルタイムに3次元計測できるようにする。短周期のレーザー発光と高速走査による高速サンプリング技術を採用している。このサンプリング技術は富士通が国際体操連盟と共同開発した体操の判定を支援する「Judging Support System」の技術を活用している。

 さらに、3つのレーザー波長の中から、海況によって計測に適した波長を選択できる水中LiDAR(Light Detection And Ranging)を導入した。これにより移動している自律型無人潜水機から3次元計測ができるようになった。

 富士通と海上技術安全研究所は、AUV-ASV連結システムに、カメラやリアルタイムに3次元計測を行うLiDARなどを一体化した水中フュージョンセンサーを搭載し、海中データをリアルタイムに自動で取得する実証実験を実施した。その結果、海中に設置された配管などやサンゴ礁のセンチメートルオーダーの高解像度3次元形状データを、リアルタイムに取得することに成功した。

 海洋生態系の保全や二酸化炭素吸収量の把握を行うには、分解能が数cm程度の高分解能3次元形状データを取得し、海中の生物の識別と体積推定を行う必要がある。しかし音響ソナーのようなこれまでの技術では、ビーム幅の限界といった問題のために、分解能が10cm程度の粗いデータになってしまっていた。

 富士通では今後、計測した3次元形状データを基に、生物学や環境学などの知見を取り入れたシミュレーションを行う、海洋デジタルツインの開発を進める。またどのような海底環境においても、安定的にデータ取得が可能な技術開発を進め、ブルーカーボンの吸収量の多い海藻や洋上風力発電設備の点検に至るまで測定対象を拡大し、ユースケースを蓄積していく。

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