ハンズは、社内からIT部門に対する問い合わせの対応業務に米OpenAIの生成AIサービス「ChatGPT」を適用し、概念実証(PoC)で高精度に回答できる効果を確認したという。この取り組みを同社と共同で行った日鉄ソリューションズが公表した。
ハンズは94店舗を展開し、同社のIT部門は本部および全店舗からのITやネットワークにおける障害対応や問い合わせなどのさまざまな業務を担当している。特に問い合わせ対応に関する業務は、IT部門の運用管理業務全体の30%を占めていたといい、この効率化がIT部門の生産性向上における課題になっていた。
問い合わせ対応に関するノウハウの情報は、規定やマニュアル、過去の対応履歴などに含まれているとし、その明文化のためには、IT部門社員の個々人のメールといった構造化されていない複雑な文章から生成する必要などがあった。このため部署全体で業務の知見を蓄積しにくい状況にあったとする。
今回の取り組みでは、日鉄ソリューションズが「生成AI/ChatGPT活用支援サービス」を提供し、ChatGPTを適用して問い合わせ対応のナレッジベースを作成した。作成では、問い合わせへの回答メールに散在したナレッジを集約し、不要な情報の除去や、時系列の整理、メタ情報の付与など対応履歴のメールデータをChatGPTが正確に学習しやすい形式に加工して、実際の解答精度を確保した。PoCで80%の回答精度を確認したという。日鉄ソリューションズは、精度検証をアジャイル的に実施することで、短期間でのPoC実行を実現したと説明している。
今後ハンズは、ChatGPTが自身の回答の正確性を判断して、不確かな回答の場合にIT部門の人材と連携するなどのChatGPT活用を前提とした問い合わせ業務の高度化を推進していくことにしている。
今回の取り組みについて同社IT統括部長の北垣次郎氏は、「実証実験を通じて、属人化されたノウハウをAIで効率的に再現することで、組織内で広く活用することが可能になり、業務プロセスの効率向上を実現した。本実証実験では、日鉄ソリューションズの卓越した技術力と経験が大きな支えとなった。引き続き、特定の業務領域における生成AIの可能性を追求していく」とコメントしている。