10周年を迎える「Kubernetes」のこれから

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 緒方亮 吉武稔夫 (ガリレオ)

2024-06-06 09:55

 「Linux」、クラウド、コンテナー、「Kubernetes」のいずれかがなかったとしたら、現在のようなテクノロジーの世界は実現しないだろう。Linuxはすべての基盤となるOSだ。すべてのアプリケーションとリソースへのアクセスはクラウドが担っている。アプリケーションを格納しているのがコンテナーだ。そしてすべてのコンテナーのオーケストレーションはKubernetesが担当している。このうちのどれか1つでもなくなると、われわれの生活と仕事の世界はもっと原始的なものになってしまう。

 進化を続けるクラウドネイティブコンピューティングにおいて、Kubernetesほど大きな影響力を持つ技術はほとんどない。10周年を迎えるKubernetesは、オープンソースが持つ協力と革新の力を証明する存在になっている。Googleでつつましく始まったKubernetesは、アプリケーションのデプロイ、管理、スケーリングのあり方を変え、コンテナーオーケストレーションのデファクトスタンダードになった。

 今後、Kubernetesが減速する兆しはない。プラットフォームとして進化を続けており、新機能や改良が定期的に加えられている。Kubernetesのコミュニティーは、ユーザー体験のシンプル化、セキュリティの向上、スケーラビリティーの強化などの方策を模索している。

 Chainguardの共同創業者でKubernetesの開発者の1人でもあるVille Aikas氏は次のように述べている。

 Cloud Native Computing Foundation(CNCF)がこのように大きく花開いたのは、プラットフォームチームにもたらされるツールとインフラのオプションの多様性の点ですばらしいことだ。それだけでなく、これによりKubernetesを運用するために必要な選択肢もたくさん生み出され、その光景が広大なものになったものと考えている。いつも思うのは、Kubernetesがこのような人気を博した大きな理由の1つは、APIがシンプルで、使用する認知負荷が比較的少ないことだと常々思っている。Kubernetesは成熟し続けるが、メンタルモデルのシンプルさとAPIの使いやすさはなんとかして維持する必要がある。

 言うは易く行うは難しだ。Kubernetesとクラウドネイティブコンピューティングのパラダイムをうまく使いこなすのは次第に難しくなってきた。

 eBPFパフォーマンスモニタリング企業Groundcoverの共同創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるShahar Azulay氏は次のように述べている。

 Kubernetesは多様なタスクを効果的に管理できる能力が証明されているが、その複雑さから、相当なセットアップと継続的なメンテナンスが必要だ。Linuxが信頼できるOSへと発展していったのと同じように、Kubernetesはユーザーフレンドリーな抽象化レイヤーへと変容していくだろう。Kubernetesは10年間で採用の拡大が続き、効率とコスト最適化に対するニーズがますます重要になってきている。

 間もなく実現する楽しみな展開の1つが、Kubernetesとサーバーレスコンピューティングとの統合だ。「Kubeless」や「Fission」などのプロジェクトでは、Kubernetesにサーバーレス機能を組み込み、開発者が既存のKubernetesクラスターに加えてFaaS(Function as a Service)をデプロイできるようにしようとしている。サーバーレスコンピューティングとKubernetesの統合は、クラウドネイティブアプリケーションの新たな可能性に扉を開くに違いない。

 エッジコンピューティングとKubernetesの組み合わせも増えている。エッジに移るデバイスとアプリケーションが増加し、エッジへのデプロイに対応するためにKubernetesが採用されている。Kubernetesのコミュニティーは、エッジデバイスで実行できる軽くて効率的なKubernetesクラスターを実現するため、「KubeEdge」「MicroK8s」「Red Hat Device Edge」などのプロジェクトに取り組んでいる。

提供:rvbox/Getty Images
提供:rvbox/Getty Images

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  2. セキュリティ

    マンガでわかる脆弱性“診断”と脆弱性“管理”の違い--セキュリティ体制の強化に脆弱性管理ツールの活用

  3. セキュリティ

    クラウドセキュリティ管理導入による投資収益率(ROI)は264%--米フォレスター調査レポート

  4. セキュリティ

    Microsoft Copilot for Security--DXをまい進する三井物産が選んだ理由

  5. セキュリティ

    情報セキュリティに対する懸念を解消、「ISMS認証」取得の検討から審査当日までのTo Doリスト

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]