UBE、基幹システムを「SAP S/4HANA Cloud」で刷新--リアルタイムデータで意思決定を高度化

藤本和彦 (編集部)

2024-10-17 07:00

 総合化学メーカーのUBEは、クラウドERPの「SAP S/4HANA Cloud」を中核とした導入支援サービス「RISE with SAP」を採用し、約20年間にわたって使い続けてきた基幹システムを全面的に刷新した。

 UBEは、2022年度からの中期経営計画では重要な施策としてDXを推進している。「Business Transformation with Digital」を掲げ、スマートファクトリーなど10の領域でDXを推進している。2022年4月に発足したDX推進室が主導役となって、2024年度には年間15億円、2027年には89億円、2030年には300億円の積み上げ効果を見込んでいる。

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 2024年度には、バリューチェーン(価値連鎖)を意識した領域間の連携を強化しており、活動を横串で貫くブランディングとデータアナリティクス&AIがその中心的な役割を担っている。DX推進室長補佐 情報システム部 博士(工学)の藤井昌浩氏は、「社会、顧客、求職者、社員などのステークホルダー(利害関係者)にUBEブランドの訴求力を高めるとともに、さまざまな施策が経営指標に及ぼす効果をAIも活用したデータ分析でシミュレートすることで“先読み経営”につなげていきます。これらを支えるデータ基盤としてS/4HANA Cloudを活用しています」と語る。

 UBEグループでは、製造・販売・会計などの基幹部門業務を支える管理システムとして「SAP R/3」を2000年に導入。その後、約20年に渡って運用してきたが、2027年のサポート終了が発表されたことを機に、S/4HANA Cloudへの移行を決定してプロジェクトを発足した。

 「(SAP R/3を導入した)当初は標準機能をできるだけ利用し、アドオン開発をしない方針でした。するとアドオン開発を回避するため、次第に周辺システムが増え、アドオンを許すと今度はアドオンが増え始め、近年はシステムを変更する際に、多くの確認作業が必要となり、負荷が増していました」と情報システム部長の緒方和樹氏は振り返る。

 「旧システムのままでは対応が難しく、DX推進の機運が高まったため、DXの基盤としてS/4HANA Cloudに移行することを決定しました。S/4HANA Cloudに移行することで処理速度が向上し、多くの標準機能が利用可能となることで、システム全体を最適化することができると考えています」(緒方氏)

 S/4HANA Cloudの導入については、2022年から構想策定を行い、計画より約4年前倒しで稼働を開始した。現行システム資産を利用しながら、新システムへの移行を効率的に実施すること、グローバル体制における業務標準化に向け、煩雑化していた各機能を整備することを目指した。

 現行システムの資産を活用し、新規導入と比較して約1年半という短期間でSAP S/4HANA Cloudへの移行プロジェクトを完遂した。さらに業務標準化の基盤を築くため、機能統廃合を行うとともに、SAP S/4HANA Cloudの新機能を活用し、データドリブンを進めている。

 「まず、S/4HANAに移行し、標準機能を最大限に活用することを目指しました。業務プロセスの分析を行った結果、まだ標準プロセスを十分に活用できていない部分がありました。そこで、グローバル標準の業務プロセスに合わせて効率化を図ることにしました」と情報システム部 システム企画・管理G グループリーダーの村谷武文氏は話す。

 「また、新機能である『Fiori』や『SAP Business Technology Platform』(BTP)も活用し、これまで周辺システムに分散していた機能をS/4HANAに集約しています。以前のR/3ではリアルタイム処理が難しく、日次や月次のバッチ処理が主流でしたが、S/4HANAに移行することでリアルタイムにデータを更新・活用できるようになると考えています」(村谷氏)

 藤井氏も「迅速にデータ基盤を整えるために、SAPが提唱するブルーフィールド方式である選択的データ変換を採用し、新システムへの移行を効率的に進め、早期に稼働を開始できました」と評価する。なお、クラウド製品を最大限に活用推進するサブスクリプション型のサービスである「Prefered Success」も活用したとしている。

 UBEグループでは、S/4HANA Cloudを基盤として、リアルタイムデータに基づいた意思決定の高度化を目指し、DX推進の動きをさらに加速させ、新たな事業価値を創造し提供するビジネスモデルへとつなげていく予定だ。

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