松岡功の「今週の明言」

PwCコンサルティングが説く「企業がDXを成功させるポイント」とは

松岡功

2024-12-27 10:00

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、PwCコンサルティング 執行役員 パートナーの中山裕之氏と、グーグル・クラウド・ジャパン 執行役員 テクノロジー部門 兼 事業開発本部 寳野雄太氏の「明言」を紹介する。

「DXを成功させるには“やることを変える”だけでなく“やり方を変える”ことが必要だ」
(PwCコンサルティング 執行役員 パートナーの中山裕之氏)

PwCコンサルティング 執行役員 パートナーの中山裕之氏
PwCコンサルティング 執行役員 パートナーの中山裕之氏

 PwCコンサルティングの中山氏は、同社が先頃開いた「2024年 DX意識調査-ITモダナイゼーション編-」についての記者説明会で、調査内容の前提として「デジタルトランスフォーメーション(DX)を成功に導く必要な2つの視点」ということで、上記のように述べた。「“やることを変える”だけでなく“やり方を変える”」とはどういうことか。興味深い話だったので、明言として取り上げた。

 PwCコンサルティングでは、ITモダナイゼーションを既存システムのダウンサイジングにとどまらず、「プロセス、人材、組織の視点も含めて、従来の枠を超える抜本的なIT変革」と定義している。

 調査結果のサマリーとしては、DXの成果についての質問に対し、「期待通りもしくはそれ以上」と回答した割合は全体の41%だったが、先進企業では96%に達した。また、デジタル人材育成の成果では、「期待通りもしくはそれ以上」の回答の割合が全体で13%にとどまる中、先進企業では80%に達しており、顕著な差が見られた。先進企業の取り組みを詳細に分析すると、DXの推進にあたって複数部門(DX推進部門、業務部門、IT部門)が連携している割合が89%、システム開発・運用のほぼ全ての役割を自社社員が担当している割合が91%、システム開発・運用における自動化が進んでおり、定期的なシステム運用作業の自動化比率が93%に達しているなどの特徴が見られた。

 詳細な調査内容については発表資料をご覧いただくとして、ここでは冒頭の発言をはじめとして調査の前提となる中山氏の話が興味深かったので、その中から次の2つの点にフォーカスしたい。

 1つは、ITのあり方についてだ。中山氏は「ITに関する環境が大きく変わった昨今では、ITそのものは当然のこと、関連する組織、人材、社内プロセス、評価指標も視野に入れ、時代に即した“あり方の再定義”が必要になってきている」と指摘し、その考え方として図1を示した。

求められるITのあり方の再定義(出典:PwCコンサルティングの会見資料)
(図1)求められるITのあり方の再定義(出典:PwCコンサルティングの会見資料)

 図1の左側は、ITに関する「従来の考え方」と「昨今のトレンド」を記したものだ。とくに注目したいのは「ITの位置付け」で、従来は「業務の効率化など支援的位置付け」だったのが、昨今では「ITそのものが企業の競争優位性の源泉」になっているということだ。こうした変化に対し、右側に記されている「あり方の再定義」では「組織」「テクノロジー」「プロセス」「人材」の4つの観点から定義する必要があるとしている。

 もう1つは、先に述べたDXを成功に導く必要な2つの視点についてだ。中山氏は「現状のDXの議論は、デジタル技術をどのように業務に適用するかという“やることを変える”ことのみにフォーカスが当たることが多い。真のDX実現には、アジャイルや業務部門のエンジニアリングスキルの向上などの“やり方を変える”ことも重要だ」と指摘し、それぞれの具体的な施策例を図2に示した。

DXを成功に導く必要な2つの視点(出典:PwCコンサルティングの会見資料)
(図2)DXを成功に導く必要な2つの視点(出典:PwCコンサルティングの会見資料)

 すなわち、「ゲームチェンジャーの視点を持て」ということだろう。調査レポートでは、DXを成功に導くための同社からの提言も示されているのでチェックしていただきたい。

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