
クアルトリクス カントリーマネージャの熊代悟氏
クアルトリクスは4月15日、2025年の事業戦略について説明会を開催した。ユーザーコミュニティーなどが活性化した2024年を振り返ったほか、新たに登場したAIエージェント「Experience Agents」について説明した。
クアルトリクス カントリーマネージャーの熊代悟氏は「2024年度は、日本市場に対し、日本円で約140億円の追加投資をした。また、ユーザーコミュニティーを東京オフィスのほか、名古屋、大阪でも開催し、私たち自身も勉強になる有意義な会だったと思っている」と振り返った。
3月18~20日に、ユタ州ソルトレークシティーで開催した年次イベント「Qualtrics X4 2025:The Experience Management Summit」では、参加者が6000人を超えたとのこと。
米国では企業のほか、官公庁でもエクスペリエンスマネジメント(XM)が活性化しており、年次イベントにもニューヨーク州のエクスペリエンスのオフィサーが登壇した。
熊代氏は「世の中はだいぶ変わってきているが、日本における(XMの認識は)まだ低いと聞く。ただ、進んでいるとする欧米でも、企業の85%がエクスペリエンスデータを収集しているが、それを意味のあるアクションに結びつけているのはわずか10%。これから、アクションにつなげる作業はますます重要になってくる。競合に対する差別化ポイントになってくるのはこの辺りだと思っている」とXMの重要性を説いた。
同日に発表したExperience Agentsは、あらゆるチャネルやインタラクションに対し、カスタマーエクスペリエンスと従業員エクスペリエンスを自律的に提供する専門化されたAIエージェント。トランザクション型のAIエージェントとは異なり、「人間の体験」を理解する能力を備え、顧客や従業員と直接やりとりできるよう設計している特徴を持つ。

AIエージェント「Experience Agents」
アンケート調査やコールセンターでの会話、オンラインレビュー、インターネットでのやりとりなどからのフィードバックを待つことなく、アクションを起こせるようになるとのこと。顧客とのやりとりに介入し、個々の顧客の好みやニーズに合わせた方法で、その場で問題を解決できるとしている。
「クアルトリクスでは、20年近くエクスペリエンスデータを蓄積している。これをクローズドな形で利用していただける。Experience Agentsは、お客さまがどのように感じているか、あるいは過去にどういった体験をされているかを基に理解を深め、パーソナライズされた体験を提供する」(熊代氏)と高い独自性をアピールした。
同日は、クアルトリクスのパートナー企業でもあるNTTデータ テクノロジーコンサルティング事業本部 テクノロジーコンサルティング事業部 統括部長 の小林大介氏も登場。「デジタルシフトに伴い市場環境が変化する中、お客さま自身も変化している。その中で企業は一人ひとりのニーズに応えることが求められている。デジタルのテクノロジーを使いこなし、リアルな場、デジタルのチャンネルを横断してお客さまの期待に応えていくことが重要になってくるだろう。そうした顧客体験を提供することが継続的に選ばれる企業の適切な条件になってくると考えている」と分析する。
リアルな場での体験とデジタルチャネルを統合的に捉えることが重要とし、「デザイン」「データ&インテリジェンス」「カスタマーエンゲージメント」の3つの領域をNTTデータの強みに据える。
生成AIの登場については「生成AIがインパクトを与えるのは、マーケティング、セールス、顧客体験(CX)などの領域。従前、お客さまを理解するためにパネル調査などを実施していたが、生成AIを用いてお客さまに対してどのような体験を提供していくべきかをデザインしていくこともできる。業務をデザインする上で、生成AIはキーになってくると思っている」(小林氏)と新たなマーケティング手法を提案する。
また、CXと生成AIを組み合わせた事例として「AIバーチャル顧客」の会話から導き出したJALカードのマーケティング施策を挙げ、AI上のグループインタビューにより得られた示唆を基にターゲットを選定することで、販促プロモーションの購買率が高級商材にもかかわらず3%上がったという。
クアルトリクスでは、2025年の取り組みとして、パートナー企業と連携して動く専門チームを立ち上げる。熊代氏は「今までの担当営業に加え、ソリューションエンジニアやマーケティング、パートナーと協働でお客さまを支援するパートナーサクセスなどのチームを用意する。これを日本で作り、パートナーの方とともにビジネスを進めていくことを計画している」と新体制を打ち出す。

パートナー企業と連携して動く専門チームを立ち上げる
「日本人は『おもてなし』というグローバルでもハイレベルなマインドセットを持っている。しかしそれが企業の形態になると縦割りになり、面で見られなくなってしまう。それをデータでつなげることで企業としてのおもてなしが提供できると考えている」(熊代氏)とし、企業を支援していくとした。