松岡功の「今週の明言」

セールスフォース幹部が説く「AIエージェントを生かすためのポイント」とは

松岡功

2025-05-09 10:55

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、Salesforce プロダクト&インダストリーズ マーケティング担当EVPのPatrick Stokes氏と、tldx Solutions 共同創業者 兼 CEOのRaphael Allstadt氏の「明言」を紹介する。

「AIエージェントは“デジタル労働力革命”をもたらす」
(Salesforce プロダクト&インダストリーズ マーケティング担当EVPのPatrick Stokes氏)

Salesforce プロダクト&インダストリーズ マーケティング担当EVPのPatrick Stokes氏
Salesforce プロダクト&インダストリーズ マーケティング担当EVPのPatrick Stokes氏

 米SalesforceのPatrick Stokes(パトリック・ストークス)氏は、同社の日本法人セールスフォース・ジャパンが先頃都内で開催したAIエージェント開発者向けのプライベートカンファレンス「TDX Tokyo AI時代を切り拓く未来の開発者・エンジニアへ」の基調講演で、上記のように述べた。AIエージェントの注目度が高まる中で、同社はここにきて上記のメッセージを前面に押し出している。同カンファレンスでもStokes氏が基調講演の冒頭で強調したので、明言として取り上げた。

 同カンファレンスは、Salesforceが3月に米国サンフランシスコで開催した同社最大のAIエージェント開発者向け年次カンファレンス「TDX 2025」の内容を基に、日本で初めて開催したものだ。そこで基調講演を行ったStokes氏が来日し、日本でも同じく基調講演を務めた。

 Stokes氏はAIエージェントがもたらす「デジタル労働力革命」について、人だけが働く場合だと「限られた処理能力」「疲弊と燃え尽き」「成長の停滞」といった点が挙げられるのに対し、人とAIエージェントが共に働けば「無限の対応力」「待ち時間ゼロの対応」「無限の成長力」を実現することができると説いた。

 そのデジタル労働力を生み出すプラットフォームとして、Salesforceが2024年9月に発表し、日本を含めて同10月に提供を開始したのが「Agentforce」だ(図1)。

(図1)Agentforceの全体像(出典:「TDX Tokyo AI時代を切り拓く未来の開発者・エンジニアへ」基調講演資料)
(図1)Agentforceの全体像(出典:「TDX Tokyo AI時代を切り拓く未来の開発者・エンジニアへ」基調講演資料)

 Agentforceの特徴については、「データとAI、業務アプリケーションが単一のプラットフォーム上でつながっており、各種AIエージェントをそのワークフローによって活用できる。同じプラットフォームだからこそ、その連携性や安全性を実現している」とのことだ。

 Stokes氏のスピーチで筆者が最も興味深かったのは、「Agentforceが導くAIエージェントの成長の道のり」と題して、3つのステップを描いた図2だ。

(図2)Agentforceが導くAIエージェントの成長の道のり(出典:「TDX Tokyo AI時代を切り拓く未来の開発者・エンジニアへ」基調講演資料)
(図2)Agentforceが導くAIエージェントの成長の道のり(出典:「TDX Tokyo AI時代を切り拓く未来の開発者・エンジニアへ」基調講演資料)

 第1ステップが「質問に答える」、第2ステップが「指示に従ってアクションを起こす」、第3ステップが「自律的にアクションを起こす」というシンプルな道のりのように見えるが、肝心なのはこの3つのステップを繰り返すことで、自律的にアクションを起こす際の精度が高まっていくことだ。つまり、AIエージェントは人間と同様に育成していく必要があることを描いている。AIエージェントの非常に大事なポイントである。

 同氏はこうしたAIエージェントの成長に取り組む企業を「Agentforceカンパニー」と呼び、旧来の企業と異なる点を図3に示した。

(図3)Agentforceカンパニーと旧来の企業との違い(出典:「TDX Tokyo AI時代を切り拓く未来の開発者・エンジニアへ」基調講演資料)
(図3)Agentforceカンパニーと旧来の企業との違い(出典:「TDX Tokyo AI時代を切り拓く未来の開発者・エンジニアへ」基調講演資料)

 図2と図3については、AIエージェントを生かすためにはどうすればよいかをシンプルに描いたものとして参考にしたいところである。

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