ハイブリッドクラウド成功の秘訣

「ハイブリッドクラウド」と「オブジェクトストレージ」で映像制作を効率化

山本慎一 (HGSTジャパン)

2018-10-18 07:15

 ハイブリッドクラウドの効果を上げる典型例としては、プライマリ/セカンダリ構成のNASを拡張したり、複数のバックアップを取ったりする代わりにパブリッククラウドを導入し、拡張性を高めながら運用コストを下げる方法があります。

 データの再配置という観点では、下図の青枠がそれに該当します。しかし、昨今の非構造化データのように、データの利用頻度が高かったり、データサイズが大きかったりする場合は想定外のコストアップ要因となります。プライベートクラウド(オンプレミス)へ回帰するにしても、データの利用頻度を考慮して無駄な移動を減らすなど、ワークフローの簡素化が必要です。

図版1

 今回は、多工程で複雑なワークフローを持つ映像制作の現場を例にハイブリッドクラウドを利用する流れを考えます。下図は、映像現場の制作フローです。左下のIngest(データ取り込み)から、時計回りに右下のPlayout(配信)まで、多くの共同作業をネットワーク経由で進めています。

 オリジナルデータのコピー作成からデータ取り込みまでの工程では、高速・大容量な外付けストレージを用いて編集・レンダリング・カラーグレーディングを行うことも多いでしょう。外付けストレージで流れ作業的に進めていく方がシンプルで効率がいいこともありますが、分業が進むに連れて並列処理が求められ、逐次処理では済まなくなるのが現状です。

図版2

 ワークフローの効率化を配慮したストレージ階層を構築するには、制作データを単にアクティブアーカイブの概念でティアリングするのではなく、青枠部分をパブリッククラウドに切り出してみます。これをシステム構成図にして表すと下図のようになります。

図版3

 制作作業の中心となる部分にはオンプレミス環境を採用し、必要とされるパフォーマンスと堅牢性、セキュリティを確保します。オブジェクトストレージの導入により、プライマリNASのストレージを最小限にとどめながら、アクティブアーカイブへの拡張性と信頼性を確保します。

 具体的には、トランスコードと配信部分をパブリッククラウドで処理しています。映画、テレビ、インターネットなど、さまざまなメディアに対応したフォーマットへ変換して迅速に配信するには、トランスコード以降を切り出すことで、前行程への負担を軽減するとともに並行での作業を可能にします。

 さらに一歩進めて、撮影現場から上がってくるオリジナルデータをオブジェクトストレージに取り込むようにしてみましょう。データ取り込み → 編集 → 配信 → アーカイブの流れに合わせて適切な速度・容量のストレージを準備していましたが、可用性・堅牢性の高いアクティブアーカイブに取り込むことで、その後の全ての作業経過も含めて集中管理し、最後はそのまま長期保全するというように統一ストレージとしての役割を担います。初期工程からアーカイブまでこなせる共有データプールに取り込むことで“流れ”が変わります。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. 運用管理

    メールアラートは廃止すべき時が来た! IT運用担当者がゆとりを取り戻す5つの方法

  2. セキュリティ

    ISMSとPマークは何が違うのか--第三者認証取得を目指す企業が最初に理解すべきこと

  3. セキュリティ

    経営陣に伝わりづらい「EDR」の必要性、従来型EDRの運用課題を解決するヒントを解説

  4. セキュリティ

    AIサイバー攻撃の増加でフォーティネットが提言、高いセキュリティ意識を実現するトレーニングの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    中小企業のDX奮闘記--都市伝説に騙されずに業務改善を実現したAI活用成功譚

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]