日本マイクロソフトは10月17日、「Windows 7」「Office 2010」のサポート終了(EOS)に向けての、現在の移行状況と最新の取り組みについて、記者説明会を開催した。特に中小企業における認知の低さに危機感を示し、Windows 7とOffice 2010のEOSをきっかけとしたIT環境の最新化を訴え掛けた。
日本マイクロソフト 業務執行役員 Microsoft 365 ビジネス本部長 三上智子氏
Windows 7は2020年1月14日、Office 2010は同10月13日に延長サポートが終了する。「Windows XP」のサポート終了時には、予算確保や検証作業に時間が掛かるなどで混乱を招いた。そのときの教訓を生かし、今回は移行推進を前倒しで実施している。
それもあってか、現在、Windows 10の移行に向けた活動を開始した大企業の割合は95%に達し、マイクロソフトのクラウドを利用している日本の主要企業の割合は92%に及ぶという。また、都道府県におけるWindows 7のサポート終了時期の認知は97%、市・特別区におけるWindows 7のサポート終了時期の認知も95%と、自治体でも高い数値となっている。
その一方で、中小企業の現状は芳しくない。中小企業におけるWindows 7のサポート終了時期の認知は57%で、前回から8ポイント上昇したものの、依然として改善の余地はある。さらに、中小企業のうちグループウェアを活用できている企業はわずが12%という実態も浮き彫りになった。
日本マイクロソフト 執行役員 コンシューマー&デバイス事業本部 デバイスパートナー営業統括本部長 梅田成二氏
日本マイクロソフトでは、Windows 7/Office 2010の移行に向けたイベント/セミナーを全国展開しており、9月時点で705回を開催、これまで約2万1000人に情報を提供した。年内に1000回の開催と3万人への情報提供を目標としている。
Windows 7/Office 2010の移行先として、日本マイクロソフトが提案するのが、「Microsoft 365」と最新デバイスへの切り替えだ。Microsoft 365は、「Windows10」「Office 365」「Enterprise Mobility+Security(EMS)」をパッケージした統合サービス。最新OSやOfficeアプリ、セキュリティ対策を統合的に提供する。
「Window 10とOffice 365を活用するメリットは、PCとスマートフォンのスムーズな連携や、『Microsoft Teams』を使った新しいコラボレーションの実現、人工知能(AI)によるデザイン提案や自動翻訳などが挙げられる。クラウドとAIを利用したセキュリティ機能の強化など、最新の環境ならより安心・安全だ」(日本マイクロソフト 業務執行役員 Microsoft 365 ビジネス本部長 三上智子氏)
会見では、国内の中堅中小企業のIT環境に関して、ユーザー調査による結果も明らかにされた。これは、マイクロソフトが2018年8月にアジアで2156社(日本は355社)にリサーチしたもの。それによると、経年によるPCの修理率は、3年目には20%だが、4年目になると、3.4倍の67%に跳ね上がるという。購入から4年以上経過したPCの利用を継続すれば、トラブルに遭遇する確率が高くなる。
「日本は諸外国に比べてPCの更新サイクルが長い」(日本マイクロソフト 執行役員 コンシューマー&デバイス事業本部 デバイスパートナー営業統括本部長 梅田成二氏)。実際、85%の中堅中小企業が、購入から4年以上経過したPCを所有し、PCの買い換えサイクルは平均5.4年になっている。その上で、1台当たりの修理やメンテナンスコスト、生産性コストを合わせると、「PC1台当たりの損失額は年間35万円に達する」と同氏は指摘する。老朽化したPCを壊れるまで使い続けるよりは、買い替えてしまった方が安上がりになるともいえる。
日本マイクロソフトは、大塚商会、シネックスインフォテック、ソフトバンク コマース&サービス、ダイワボウ情報システムとパートナー協業を結んでおり、全国2万社以上のリセラーネットワークとトレーニングプログラムやキャンペーンなどを通じて販売支援している。
また、移行対応の促進に向けた新たな取り組みとして、早期導入企業向けのキャッシュバックキャンペーンを10月17日~12月21日に掛けて実施する。「Microsft 365 Business」の場合で、1ユーザー当たり1万円、「Office 365 Business Premium」の場合で、同3000円のキャッシュバックを受けられる。さらに、タレントの稲村亜美さんをアンバサダーに起用した「中小企業お助け隊」が札幌、大阪、福岡など全国10都市でキャラバンを展開する。