富士通、NTT、NECが相次いで北米に人工知能(AI)技術を推進する拠点の新設を発表した。日本を代表するICTベンダーがこぞってAIの最先端を行く北米に乗り込んだ格好だが、果たして3社の挑戦は奏功するか。
富士通がカナダ、NTTがシリコンバレーにAI拠点を新設
FUJITSU Intelligence TechnologyのCEOを務める吉澤尚子 富士通執行役員常務デジタルサービス部門副部門長
富士通が11月6日、AIビジネスにおけるグローバル展開の戦略策定およびその実行を担う新会社「FUJITSU Intelligence Technology」をカナダのバンクーバーに設立し、事業を開始したと発表した。
新会社は、富士通がこれまで日本を含む世界のリージョンごとに実施してきたAIビジネスを束ね、グローバルな商品・サービスとして各リージョンに展開していくことで、AIビジネスの拡大を図っていく構えだ。
発表の内容や同日行われた会見でのやりとりについては関連記事1をご覧いただくとして、ここでは新会社をカナダに設立した理由について、新会社の最高経営責任者(CEO)を務める吉澤尚子 富士通執行役員常務デジタルサービス部門副部門長が会見で説明した内容を記しておこう。
図1に示したのが、その理由である。6つ挙げているが、それぞれ赤字で記されているところがポイントである。吉澤氏はこの中で5つ目の内容を説明した際、特に米シリコンバレーよりコスト効率が良いことに触れた一方、「シリコンバレーに日本の国内出張の感覚で行き来できる」ことを強調したのが印象的だった。
図1:富士通がAI拠点をカナダに新設した理由(出典:富士通の会見)
NTTも同じ11月6日、AIをはじめとした基礎研究の新たな拠点を、こちらは米シリコンバレーに設立すると発表した。2019年7月をめどに活動を始めるという。シリコンバレーで最先端を行く研究者たちとネットワークを構築し、長期的視野でAIや量子コンピュータなどの活用を目指す構えだ。
図2に示したのが、同日行われた発表会見でNTTの澤田純 代表取締役社長が中期経営計画における研究開発の強化・グローバル化について説明した内容である。新たな拠点は「NTT Research」の名称で法人化される見込み。「ニーズの収集と世界最先端の基礎研究を強化」するのが狙いで、総合的なグローバル展開によって「世界一・世界初、驚きの創出」を掲げているのが、興味深いところである。
図2:NTTの中期経営計画における研究開発の強化・グローバル化(出典:NTTの発表資料)