10月に突然Rethink Roboticsが廃業を発表したことは、協働ロボット業界に衝撃を与えた。同社はその発表の中で、財務基盤が不安定であったことをほのめかしていた。このニュースをきっかけに、協働ロボット市場の足場は、これまで考えられていたよりも不安定なのかどうかという議論が行き交った。
隔離のための柵を必要とせず、人間と肩を並べて動作する協働ロボットは、この数年間、産業オートメーション業界の成長を支えてきた大きな要因の1つだった。協働ロボットは重工業で利用されているロボットよりも小型で、多くのフォースセンサや光学センサを備えており、そばで働く人間を傷つけない仕組みになっている。
Rethink Roboticsは、人間に近いサイズと姿を持つ独特の形態の協働ロボット「Baxter」と「Sawyer」を販売していたが、この市場のリーダーだったことはない(誰もが認めるこの分野の市場リーダーは多関節型のアームを持つロボットのUniversal Robotsだ)。しかし同社は、最初期に協働ロボットを発売した企業の1つであり、狭いオートメーションコミュニティの中では大きな存在感を放っていた。
Rethink Roboticsのロボットが写真映えすることもあって、同社が報道される機会も多かったため、その廃業が報じられると、協働ロボット市場に対する評価に動揺が生じた。
筆者は、最近米カリフォリニア州サンタクララで開催されたカンファレンス「Collaborative Robots, Advanced Vision & AI Conference」で、業界関係者や協働ロボットの潜在顧客に、この状況についてどう見ているかを尋ねて回った。彼らの答えは、Rethink Roboticsは製品と市場のミスマッチの問題を抱えていたのだろうというものだった。
具体的に言えば、同社の問題は、2つの主力プラットフォームにすべてをかけてしまったことだ。Universal RobotsやABBなどの他の企業は、積載量が5~10kgで自由度が大きい、構成を限りなく変更可能なロボットアームを生産していたのに対して、Rethink Roboticsは人間に近いサイズで、2本の腕と顔を持つロボットの開発を選んだ。
実際、Rethink Roboticsの廃業後も、協働ロボット市場はこれまで以上に期待が持てるように見える。MarketsandMarketsが新たに発表したレポートによれば、2018年の協働ロボット市場の規模は7億1000万ドルだが、2025年には120億ドル規模に達する可能性があるという。これは、この期間の年平均成長率(CAGR)が50%を超えることを意味する。
Robotic Industries Associationのアナリストに話を聞いた際に提供してもらった、北米の産業用オートメーション市場に関する最新の統計によれば、2018年の1~9月までに市場全体の規模は9%成長したが、その多くが協働ロボットの成長によるものだという。
2018年9月には、Universal Robotsが販売した協働ロボットの数が2万5000台に達した。ABBやFANUCなどのほかの企業も好調なようだ。
パイオニア企業の1つが倒産したとはいえ、協働ロボット市場が「オートメーション2.0」の先駆けとして今も有望な市場であることは明らかだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。