EAの策定効果の一つに、「柔軟で変化に適応できる情報システムの実現」がある。その効果を最大限に発揮するためには、どのようなポイントに注目してEA活動を推進していけばよいのだろうか。
EAはビジネスと情報システムの「設計図」を描き、それをもとに情報システム等の改善を進めていくものである。また、EAでは現状(As-Is)の設計図を描くだけでなく、将来に向けてどのような変化が必要かを明らかにしていくために理想像(To-Be)としての設計図を描く。そうすることで、ビジネスの変化が情報システムにどのような変化を求めるのか、情報システムに用いられるITの進歩がビジネスにどのような影響を与えるのかがこれまで以上に明確になる。そのため、EAは「柔軟で変化に適応できる情報システム」の構築に貢献すると考えられている。
このように理想像(To-Be)を通して推進すべき変化(改善内容)を明らかにしていくことに加えて、低コストで変化に対応できる情報システムを実現していくためには、「変化しない普遍的なこと」を明らかにしていくことが重要である。それによって、情報システムを「長期的に変更することなく使い続けられる部分」と「環境変化にあわせて柔軟に改良を行っていく部分」に分けることができるからである。当然のことながら、「柔軟で変化に適応できる情報システム」は可能な限り低コストで実現していく必要がある。そのためには、「変化の必要性の小さい部分」をできるだけくくり出し、長期間使い続けることが重要となる。「変化の必要性の小さい部分」が情報システムに占める割合が大きければ大きいほど情報システムの維持・改良にかかるコストは少なくてすむ。逆に切り分けが明確になされていない場合、たとえ柔軟な情報システムであったとしても改良には多大なコストがかかっていくことになる。また、短期間での情報システムへの機能追加も難しくなる。
EAにおいては、この「変化しない普遍的なこと」を明確化する取り組みを、データアーキテクチャにおいて実施していく選択肢と、アプリケーションアーキテクチャにおいて実施していく選択肢がある。前者は、EAという最新の包括的アプローチのなかで80年代に生まれたデータ中心アプローチという理想にあらためて取り組むものといえる。一方後者では、Webサービスなどの標準技術を用いることで、ソフトウェアの部品化(サービス化)に取り組んでいくことになろう。「変化の必要性の小さい部分」を再利用可能なソフトウェア部品として切り出すアプローチである。
いずれの選択肢を選ぶにせよ、「変化しない普遍的なこと」を見出すことが、「柔軟で変化に適応できる情報システム」を低コストで実現するための最重要ポイントの一つといえる。
(みずほ情報総研 EAソリューションセンター 近藤 佳大)
※本稿は、みずほ情報総研が2005年3月1日に発表したものです。