サンが目指すユーティリティコンピューティングの新次元

インタビュー:西田隆一(編集部)
文:奥隆朗(編集部)、写真:津島隆雄

2005-04-01 00:00

 コンピューティング環境の“ユーティリティ化”をコンセプトに戦略を進めるサン・マイクロシステムズ(以下、サン)。必要なときだけ、必要なコンピューティングリソースを利用できる環境を実現することで、より多くのユーザーのIT利用を促進できると標榜している。同社の代表取締役社長 ダン・ミラー氏に、サンの目指すコンピューティングの未来図とビジネスについて話を聞いた。

コンピュータを電源につなげば巨大なリソースを利用できる

--サンが標榜しているユーティリティコンピューティングとはどのようなものなのでしょうか。

 ユーティリティコンピューティングの話をするには各種産業の話がわかりやすいと思います。それは、歴史を振り返ると、多数のユーザーに使ってもらえることが、各産業の発展につながっていることがわかるからです。

 例えば、空運業では航空運賃が下がったことで、たくさんの人が利用できるようになりました。また、固定電話や携帯電話もサービス開始当初はわずかなユーザーしかいませんでしたが、いまはほぼすべての人が利用しています。それと同じ概念でコンピュータを利用してもらおうというのが、ユーティリティコンピューティングなのです。

 ユーティリティコンピューティングを実現するには、規格が標準化されることが重要だと考えています。標準化されることによって、さまざまな企業が市場に参入できるようになり、結果として低価格な製品が登場し、市場が活性化します。ITの世界では、標準化することによって、ビジネスチャンスの喪失と成長が停止することを懸念する考えが多数を占めますが、市場の拡大という視点で見たほうが大きなメリットが出ます。このため、標準化はビジネスのブレイクポイントとして見る方が正しいでしょう。

 サンは、コンピュータがスタンドアロンで動作していたころから、ネットワーク化が重要であると考えていました。そして、ネットワークにつながっていることが当然となった現在、ユーティリティ化が今後20年の間に起きるべきことだと考えています。ユーティリティ化によってこれまでごく一部の人にしか、利用されなかったコンピューティング環境が、あたかも電力のようにたくさんのユーザーに利用されるようになります。

 IBMは、「BlueGeneスーパーコンピューティング・システム」と顧客をVPNで接続し、時間単位で高性能なコンピュータの能力を提供するサービスを2005年3月15日に開始しました。これは、サンにとっても、競争ができる良きライバルができたと思っています。「クライアントマシンをコンセントにつないだだけで、すぐに通信できて、高性能な処理も可能になる」そんな時代を作るのがサンの理想であり、ユーティリティコンピューティングは、人類にとってプラスになるものだと考えています。

--IBMやHPもユーティリティコンピューティングと同様のコンセプトを打ち出しています。

 他社との最も大きな違いは、最終的な形態にあります。例えばIBMは、サービスとコンサルティングを収益の軸足に置いている企業です。これはわたしの意見ですが、IBMが標榜する「オンデマンド」の世界の向かう先では人とサービスで収益を得る必要があると思っています。このため、IBMのシステムは、人が介在するクローズドかつプロプライエタリなシステム構成になると考えています。

 一方、サンは革新的なコンピューティングシステムを創造し、それを販売することによって先行者利益を得てきた企業です。サンの目指す未来には、顧客が自ら利用し、管理できる環境があります。そのためには、技術のオープン化、標準化によって起きる低廉化と、市場の拡大が必要だと考えています。

 ユーティリティコンピューティングが可能になれば、企業はこれまでよりも格段にコストを下げられます。企業は、常に同じだけのリソースを必要としている訳ではなく、コンピュータの利用率は常に変動しています。金融業界では、店舗が開いている時間帯には、高い信頼性と多大なコンピュータリソースを必要としますが、夜間にはほとんど必要としなくなります。ユーティリティコンピューティングによって、リソースが自由にコントロールできるようになれば、大幅なコスト削減を実現できるので、企業はたくさんのメリットを享受できます。

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