リードエグジビジョンジャパンは6月29日から3日間、米Microsoft会長兼チーフソフトウェアアーキテクトのビル・ゲイツ氏の基調講演の下、東京ビッグサイトで以下に示す5種類のIT関連展示会を開催した。(1)第14回ソフトウエア開発環境展(SODEC)、(2)第10回データウェアハウス&CRM EXPO(D&C)、(3)第8回組込みシステム開発技術展(ESEC)、(4)第7回データストレージEXPO(DSE)、(5)第2回情報セキュリティEXPO(IST)である。出展社は昨年の743社を超える888社である。
初日の基調講演にビル・ゲイツ氏が登場し、ソフトウェアが進化する方向と米Microsoftの取り組みについて熱弁を振るった。ITの専門家だけでなく誰もがコンピュータを利用する社会になるとActiveDirectoryなどでユーザー情報と権限を管理する必要がある点や、開発・運用プラットフォームとしての.NETの優位性などを説いた。XMLデータのインタフェースとしてのOffice 12やLonghornなど最新の話題にも触れた。
展示会は、全6ホールで構成する東展示棟の第1〜第5ホール、展示総面積4万2070平行メートルを使用し、888社が参加した。ソフトウェアでは新製品の初出展が何点か見られたほか、セキュリティ関連の展示では金庫やロッカーなど視覚に訴える分かりやすい展示も目を引いた。
ソフトウエア開発環境展では、カール(旧カール・アジアパシフィック)が、2005年9月に出荷を予定するリッチ・クライアント言語の新版「Curl V4.0」を初展示した。新版では帳票印刷(レポートライター)機能を強化し、従来の画面グラフィックスの印刷に加え、定型フォームの帳票を出力する機能を付加した。署名付きのアプレットに限って実行する機能や暗号化ライブラリの搭載など、セキュリティ対策機能も強化した。価格は開発ライセンスが5万9800円、稼動ライセンスが1IRL当たり150万円から。
人件費の安いアジア圏へのオフショア開発の展示も賑わっていた。フィリピン企業数社がフィリピンパビリオンを構成して展示したほか、国内でもベトナムでのオフショア開発を手がける受託開発会社の一コーポレーションジャパンがブース展示した。「ベトナム人は真面目で技術力が高い。人件費は安く1人月20万円だ」(説明員)。同社が抱えるベトナム人エンジニアは約20人。ユーザー要件定義や設計フェーズの機能は持たず、国内SIベンダーやSIベンダーの協力会社などから開発開発を受託する。
データストレージEXPOでは、東京エレクトロンが、米Oracleが間もなく買収する米TimesTenのインメモリ・データベース管理システム「TimesTen」を展示し、ソフトの仕組みと優位性をパネルで示した。同ソフトはメモリ上にデータを配置することを前提としたDBMS(データベース管理システム)であり、ディスクに配置することを前提とした他のDBMSよりも構造が単純でメモリバッファ負荷などを抑えられるため高速に動作する。元々米OracleのDBMSと組み合わせて使うケースが多かったが、米Oracleが買収を表明したことで注目が集まっている。
情報セキュリティEXPOでは、シー・エス・イーが2005年末に出荷を予定するマトリックス認証ソフト「SECUREMATRIX」の新版を参考展示した。新版では、従来の遠隔ログイン時での利用用途に加え、Windowsログオン画面にマトリックス認証を適用できるようにする。社内システムを構成するWindowsネットワークのドメイン認証に適用することで、情報システムの認証手順をマトリックス認証で一元化できるようにするのが狙いである。
なお、マトリックス認証とは、文字(数字)を盾横に並べたマトリックス上から、ユーザーが規則に基付いて文字を拾ってパスワードを知るというもの。文字を拾う規則は、例えばマトリックスの右上からスタートして斜め右下に読んでいくといった、マトリックスの2次元平面上の規則である。マトリックスを構成する文字を認証の都度変更することにより、文字の拾う規則を知っているユーザーだけが正しいパスワードを知るという仕組みである。
セキュリティ関連の展示で特に目だった展示が、ヤマトシステム開発の宅配ボックス「e-ネコセキュリティBOX」である。紙に印刷した社内の機密文書などを運搬する際に利用する箱であり、物理的な不正アクセスを防御する。e-ネコセキュリティBOXは携帯電話を内蔵しており、正規の利用者が携帯電話を使って電話をかけることにより、箱の開封が可能となる。箱の開け閉めや開けていた時間などを履歴として管理しており、履歴の参照が可能である。携帯電話の位置情報サービスを利用してリアルタイムにe-ネコセキュリティBOXの位置を調べることもできる。
実際の運用方法は以下の通り。(1)荷物を送る側が、ヤマトシステム開発のe-ネコセキュリティBOXセンターに携帯電話から電話をかける。この時点で発信者番号によるアクセス制御がかかる。(2)利用する箱のIDと、荷物の受取人の携帯電話番号を入力する。(3)箱が開くので荷物を入れ、箱を閉めて配送する。(4)荷物を受け取った受取人は、e-ネコセキュリティBOXセンターに携帯電話から電話をかける。この時点で発信者番号によるアクセス制御がかかる。(5)開ける箱のIDを入力し、箱を開ける。