IBMが株式非公開企業であるDataPowerを買収した。DataPowerは、XMLネットワークトラフィックを高速化/安全化する専用ハードウェアを開発している。
買収の金銭的な条件に関する詳細は、明らかにされていない。
マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置くDataPowerは、XMLフォーマットデータを処理するアプライアンスを販売する、数少ない企業の1つだ。同アプライアンスは、従来のハードウェアサーバに過剰な負担をかける可能性があるトラフィックを処理することで、より高いパフォーマンスを実現する機器。
IBMは、DataPowerの製品を基礎とする一連のサービス指向アーキテクチャ(Service Oriented Architecture:SOA)アプライアンスを提供していく意向だと述べている。SOAとは、WebサービスおよびXMLに代表される標準仕様を利用するモジュラーシステムで、柔軟性やコスト効率の向上を実現する。
今回のIBMによるDataPowerの買収に先立ち、Intelも今年に入り、やはりXMLアプライアンスベンダーであるSarvegaを買収している。さらに、IBMのパートナー企業Cisco Systemsが6月には、アプリケーション指向ネットワーキング(Application-Oriented Networking:AON)製品の提供を開始して、同市場へ参入している。
IBMのコンサルティング部門であるGlobal Servicesは、以前からDataPowerと提携を結んでおり、顧客との契約内容に応じてDataPower製アプライアンスを提供およびインストールしていた。IBM Software GroupのWebSphere担当ゼネラルマネージャRobert LeBlancは、70名の従業員を擁するDataPowerを買収したことで、IBMはSOA関連製品およびサービスを充実させることができると述べている。
「今回の買収は、SOA投資に力を入れ、より押し進めようとする当社の戦略の一環だ」(LeBlanc)
DataPowerの製品には、Webサービスアプリケーションの動作を高速化する専用チップが搭載された、「Accelerator」アプライアンスが含まれている。同社はまた、XMLベースアプリケーション向けのセキュリティゲートウェイや、異なるシステム間でデータを共有するためのインテグレーションデバイスも提供している。LeBlancによれば、DataPower製品のユーザーは通常、これをIBMの「WebSphere」やその他のアプリケーションサービスと連係させて利用し、アプリケーションのパフォーマンスを向上させているという。
アナリストやDataPowerの競合会社は、IBMおよびCisco、Intelといった企業がXMLアプライアンスに投資を行っているという事実は、すなわち同製品分野が新たに登場した注目株であることを意味すると指摘している。
ZapThinkのアナリストRon Schmelzerは、「IBMの動きは、SOAに対する包括的な取り組みはソフトウェア単独では達成できないということを、明確に示した」と話し、「これでBEA SystemsやOracleといったその他のプラットフォームベンダーも、いかにしてみずからが扱うSOA分野を拡大し、単なるソフトウェアや専門サービスという形態から脱却すればよいのか、真剣に考えざるを得なくなるだろう」と述べた。
専門化したXMLネットワークアプライアンスの出現には、XMLとXMLベースのウェブサービスプロトコルの使用が増加しているという背景が1つにはある。これらの規格は、システム間での効果的な相互運用性を考慮しているが、XMLドキュメントの処理に関して性能上の問題を発生させてもいる。
Reactivityの最高技術責任者(CTO)Andrew Nashは、残りの独立系XMLアプライアンスメーカーも、今回の買収から利益を得ることが可能だと述べている。
「自社のITインフラストラクチャに関してIBMと関わりを持ちたくない顧客は多数存在する。今回の買収は、そのような顧客を取り込むチャンスとなる」と、Nashは説明する。また、同氏は、規模の小さな企業でも先端を行くことは可能だと付け加え、「迅速な対応ができないという理由で、IBMを責めていた人などいないと思う」と述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ