BI市場が、緩やかにではあるが、着実に拡大し、開拓の余地が大きいうえに、関心も衰えていないとなれば、各種ベンダーがBI関連の取り組みを強化している現状はある意味自然な流れであるといえる。このような企業の現状とベンダーの取り組み状況を鑑みると、今後数年にわたり、日本企業へのBIソリューションの浸透は着実に進むものと思われる。
BIの利用状況のこれまでの変化と現状を見る限り、BIを取り巻く環境は非常に明るいものに見えるかもしれないが、落とし穴はないのだろうか。
BI導入が成功であったか失敗であったか、その成果について聞いた2004年10月の調査によれば、「期待以上の成功」「期待通りの成功」「ある程度の成功」というポジティブな回答をした企業は、58%であった。
この結果だけを見た場合、それなりの成果が得られているように見えるかもしれない。しかし、ある程度は成功という回答を、期待は下回ったものの何らかの成果は得られたというややネガティブな意思表示と捉えた場合、期待以上の成功、期待通りの成功という2つの選択肢を選んだ企業のみが、真に十分な成果を得られたと考えられるが、このような企業は10%に満たなかった。
BIに対する注目度の高まりや、日本企業へのBIの着実な浸透とは裏腹に、BI導入より期待通り、あるいはそれ以上の成果を得たという企業は少ない。また、「BIを知らない」という企業が3割以上存在するという事実は、BIソリューションベンダーが開拓可能な市場があると見ることができる一方で、BIの本質が十分理解されていない可能性も示唆している。
本連載では、これからBIに取り組む企業、あるいは既にBIに取り組んでいるものの、十分な成果が得られていないと感じている企業が、気をつけるべき以下の5つのポイントについて順次解説していく。
- 第2回=データは精度と鮮度が命〜データ品質の重要性〜
- 第3回=単一の情報ソースの提供〜データウェアハウスとデータマート〜
- 第4回=万能なツールは存在しない〜目的にあったツール選定〜
- 第5回=使われなければ意味がない〜IT部門とユーザー部門の協力〜
- 第6回=全体バランスを考慮する〜BIフレームワークの重要性〜
堀内 秀明(Hideaki Horiuchi)
ガートナーリサーチ ソフトウェアグループ ビジネスインテリジェンス担当主席アナリスト日本国内のデータベース・ソフトウェアなどのソフトウェア市場動向・将来予測・競合分析ならびに、ビジネスインテリジェンス・システムの製品選定、システム導入に関するアドバイスを担当。
ガートナー ジャパン入社以前は、国内大手SIベンダーにて10年間、製品調査、システム提案・構築ならびに技術支援に従事。
ガートナーが最新の情報と提言を結集するイベント「Gartner Symposium/ITxpo 2005」(2005年11月30日〜12月2日)にて『インフォメーション・アキテクチャーの役割と重要性』をテーマに講演を行うほか、2006年の「ビジネス・インテリジェンス・サミット 2006」(2月22〜23日)では、チェアパーソンを務める。