AppExchangeでビジネスウェブのプラットフォームを--セールスフォース - (page 2)

藤本京子(編集部)

2006-01-31 18:53

今はビジネスウェブへの転換期

--Salesforceでは、AppExchangeでビジネスウェブのプラットフォームを提供すると強調していますが、今後ビジネスウェブはどのように拡張していくのでしょうか。

Harris ビジネスウェブは、まずSalesforceのCRMアプリケーションをウェブ上で提供することから始まりました。そして、今回のAppExchangeの登場で、CRM以外のアプリケーションもウェブ上で提供できるようになったのです。これがビジネスウェブの拡張の方向です。Salesforceの成功例を見て、「これこそ未来のウェブの姿だ」と気づく企業が増えています。OracleやSAPなどがオンデマンドサービスについて語り始めたのもそのためです。

 今ではWebサービスなどの標準が存在するため、さまざまなアプリケーションがウェブ上で提供できるようになり、これらのサービスをつなぐことができるようになりました。SalesforceのアプリケーションとGoogleのサービスが統合できるのもそのためです。このような統合は今後も次々と出てくるでしょう。

--ビジネスウェブの世界はAppExchangeのみで実現するわけではありませんよね。他社も同じようなプラットフォームを提供するようになると思いますか。もしくはAppExchangeがビジネスウェブの唯一のプラットフォームとなるのでしょうか。

Salesforce.comの共同創設者 兼 テクノロジー統括責任者、Parker Harris氏

Harris いや、AppExchangeが唯一のプラットフォームになることはないでしょうし、もしそうなってしまうとビジネスウェブもそれほど大きく発展しないでしょう。AppExchangeは確かに広範囲をカバーするプラットフォームです。しかし同時に、Yahoo!やGoogle、Amazonなど、コンシューマー向けにサービスを提供している企業も、APIを公開するなどしてビジネスウェブに進出しようとしています。APIを公開すれば、企業がそれを利用した新たなサービスを展開し、トラフィックの誘導につながりますからね。今後もこうした方向に動く企業は多いでしょう。

--MicrosoftやOracleなどの大手ソフトウェア企業もウェブやオンデマンドサービスに注力しようとしていますが、彼らの動きをどう見ますか。

Harris 既存の大手ソフトウェア企業がどのような方向性を持ってウェブ戦略を打ち出すかはわかりません。ビジネスウェブには大きなチャンスがありますから、彼らもこの世界に進出することは間違いないでしょう。ただし、こうした企業はすでに物理的なソフトウェアという製品を抱えているため、ウェブに注力することにためらいを感じてしまうでしょうね。今までの収益構造を完全に覆すことになりますから。ソフトウェアの顧客ベースを崩さないようにしつつ、ビジネスウェブに進出することは困難ですし、進出したとしてもサービスは限られたものになると思われます。

 その点、SalesforceやYahoo!、Google、Amazon、eBayなどの新興企業は、はじめからウェブ上でサービスを展開していたため、ためらうことなくビジネスウェブのモデルを推進できるのです。

 我々のサービスには、ソフトウェアのように「CDを購入する」、「インストールする」といったコンセプトは存在しません。メインフレーム時代からクライアント・サーバ時代に移行していった時と同様に、今はウェブの世界に移行する大きな転換期だと思います。ほとんどの企業はすでにブロードバンド環境も整っていますからね。

--AppExchangeでは、コミュニティ参加型でアプリケーションを作る「ソーシャルプロダクション」が可能だと言っていましたが、これはまさにWeb2.0の世界でよく語られるコンセプトですね。ソーシャルプロダクションは、今後のビジネスウェブの未来の姿となっていくのでしょうか。

Harris そうなるでしょうね。ウェブには国境がなく、グローバルな環境でサービスを生み出すことが可能です。また、ひとつの会社ですべてのサービスは提供しきれませんから、ソーシャルプロダクションをうまく活用すべきだと思います。

 ソーシャルプロダクションはまだ始まったばかりで、どのような方向に進化するかはわかりませんが、非常に可能性の高い手法だと思います。Salesforceの役目は、ソーシャルプロダクションに必要な方向性やツール、顧客にリーチできる環境などを提供することです。

--SalesforceはAppExchangeによってユーザー数を増やし、収益を上げることができますね。一方、AppExchangeに参加するアプリケーションプロバイダ側にとってのメリットを聞かせてください。

Harris インターネットを介してサービスを提供するというモデルは、サービスを展開するまでの時間やコストの削減に大きく貢献するため、顧客ニーズに迅速に応えることができます。また、「ロングテール理論」にもあるように、ウェブ上では大多数の人が望んでいる人気商品だけでなく、ニッチで一部の人しか必要としない商品が非常によく売れています。ビジネスウェブも同じで、限られた市場の特定ユーザーを対象としたアプリケーションが売れることもあるのです。

また、AppExchangeという「ショッピングモール」があることで、アプリケーションプロバイダが自ら店舗を構える必要がなくなります。eBayでも同じですよね。数え切れないほどの個人や中小企業がeBayというプラットフォーム上で「売り主」となり、自社で集客する場合に比べると何倍もの購入者にアプローチできています。

--今後のR&Dプランについて教えてください。

Harris CRMとプラットフォーム作りに注力することに変わりはありません。まずCRM関連では、SFA(セールスフォースオートメーション)機能の強化やコラボレーション機能、サービスやサポート管理機能、CTI(コンピュータテレフォニーインテグレーション)、マーケティング管理機能など、顧客の要望に応じて対応していきたいと思います。

 一方のプラットフォーム作りは、ユーザーの意見のみならず、アプリケーションプロバイダの声も反映した上でAppExchangeの使い勝手を向上させます。社内でもAppExchangeで提供するアプリケーションを開発していますが、ここからアプリケーションプロバイダがAppExchangeを利用する際の課題や必要な機能も見えてきます。アプリケーションが増えても使いやすい環境を目指して、AppExchangeをよりよいものにしたいと思います。

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