マイクロソフトは7月12日、同社が2004年より開始した公益信託「マイクロソフト知的財産研究助成基金」の第3回公募の助成先および受賞者を決定し、助成事業贈呈式を開催した。
この公益信託は、マイクロソフトおよび中央三井信託銀行が信託委託者となって、知的財産の創造や保護に関する経済・社会システムの研究に携わっている研究者を助成すると共に、優れた業績をあげた研究者を顕彰するものだ。賞の授与を通じ、知的財産が有効に循環する社会の構築や、日本の国家的戦略である「知的財産立国」の実現に貢献することを目的としている。
マイクロソフト 代表執行役社長のDarren Huston氏は、「ソフトウェア企業として知的財産はなくてはならないもの。また、政府が知的財産への取り組みを進める中で、その活動を支援することは非常に重要だ。知的財産がうまく社会のシステムに組み込まれるよう、今後の受賞者の研究に期待している」と述べた。
来賓として挨拶に立った内閣官房 知的財産戦略推進事務局長の荒井寿光氏も、「現在の著作権制度などは、19世紀に作られたものが元となっていることから、内閣の知的財産戦略本部でも21世紀にふさわしい知的財産制度がどのようなものかという議論がなされている。知的財産推進計画の中でも、知的財産の総合的かつ学術的研究を行うべきだということが国の重要な方針として決まっており、マイクロソフトが率先してこのような助成金制度を設けたことは大変ありがたい」としている。
今回の公募では、3月1日から5月19日までの間に、研究助成39件、顕彰3件の応募が寄せられ、研究助成9名、顕彰1名が選定された。受賞者のリストは以下の通り。
■研究助成(9名)
- 東京大学大学院情報学環・学際情報学府学際情報学科 大学院生 五十嵐美香氏
「オンラインゲーム・コミュニティの教育目的利用のための研究」 - 慶応義塾大学デジタルメディア・コンテンツ総合研究機構 助手 石井美穂氏
「デジタルコンテンツへのメタデータ付与による著作権管理方法に関する研究」 - 京都大学大学院法学研究科 助教授 愛知靖之氏
「知的財産信託をめぐる法的諸問題の総合的研究」 - 早稲田大学大学院法学研究科 大学院生 小川明子氏
「欧州における追及権制度の変遷と、各国における制度可能性の検討」 - 東京大学大学院工学系研究科 大学院生 小関珠音氏
「中小企業のナノテクノロジー分野における特許戦略に関する分析〜産学官連携の成果物としての特許取得状況〜」 - 新潟大学経済学部 教授 芹澤伸子氏
「知的財産権、文化保護政策とWHO交渉の経済分析」 - 情報セキュリティ大学院大学セキュア社会システム研究所 教授 苗村憲司氏
「私的録音・録画補償金制度とデジタル権利管理(DRM)システムのコストと効用の比較に関する研究」 - 東北大学大学院工学研究科 教授 長平彰夫氏
「オンデマンド型Eラーニングにおける著作権の許諾に関する研究」 - 神奈川大学経済学部 専任講師 西村陽一郎氏
「日米企業における未利用特許の経済分析」
■知的財産研究賞(1名)
- 独立行政法人メディア教育開発センター研究開発部 教授 児玉晴男氏
「学術コンテンツの流通・利用を促進する知的財産制度の研究」