リアルコムは9月12日、新たな製品戦略に関する記者発表会を行った。同社は、企業のナレッジマネジメント(KM)に関して、「KnowledgeMarket」をはじめとする一連の製品群とコンサルティングサービスを提供する企業。同社はこれまで「KMの専業ベンダー」というスタンスでビジネスを行ってきたが、今後はKMの概念を拡張するというアプローチで、エンタープライズコンテンツマネジメント(ECM)市場への進出を加速する。
リアルコム、取締役兼CMOの吉田健一氏によれば、KMの拡張によるECMへの移行は、ユーザーニーズに基づく必然という。その理由としては、いわゆる「ナレッジ」と、日常業務の中で蓄積されていく非構造データとの切り離しが難しいといった現実や、個別の業務課題の解決に特化したシステムが、企業として認められない環境になりつつあるといった背景がある。
さらに、電子化される情報量の増加に伴って相対的な質が低下していたり、組織や企業の壁を超えてコラボレーションが高度化しているにもかかわらず、コンプライアンスや内部統制は強化しなければならないといったジレンマの元で、情報の活用と統制のバランスをとりつつ、情報を管理したいというニーズが高まっているという。
これらの背景を元に、これまでナレッジマネジメント、ポータル、ドキュメント管理、Wikiといった、それぞれの市場でビジネスを行っていたプレイヤーが、ECM市場に集結しつつあるといった状況がある。
リアルコムでは、ECMを「情報系のERP」と位置づける。情報、ナレッジ、人などの企業内に存在するコンテンツを統合的に管理する仕組みとして、KM分野で蓄積したノウハウをベースに、独自の視点でのソリューションを提供していくという。
KM分野からの参入となるリアルコムの、ECM分野での強みについて、吉田氏は「コンプライアンスや統制に縛られすぎない“人中心”のコンテンツマネジメント」「最もニーズがある“Lotus Notesユーザーの再活性化”」「ウェブやSNSといったインターネット発祥の技術やコンセプトを、企業の中で現実的に定着させてきた実績」の3点を挙げる。
技術的には、人と人および人と情報の活動を記録する「アクティビティログDB」、ユーザーの情報、権限、職制などを記録し他のデータベースと統合的に管理する「アイデンティティDB」、ファイル名や作成者といった情報に付随する情報を管理する「メタデータDB」の3つのリポジトリを組み合わせたミドルレイヤを用意することにより、独自のソリューションを提供していくという。
具体的な製品としては、Lotus Notesユーザー向けのコンテンツ管理プラットフォーム製品の新バージョン「REALCOM HAKONE for Notes V1.3」を、同日より出荷開始したことを発表した。同製品は、ユーザーがNotes DBの制限に縛られることなく、内部の情報を統合的に整理、抽出、提示することで、継続的な情報品質の向上を図ることができるソフトウェア。新バージョンでは、パフォーマンスの向上と文書のマッピング機能が向上しているという。
また、近日中に「Google Search Appliance」との連携機能、2006年下旬にはSalesforce.comの「AppExchange」との連携機能を提供するほか、2007年初旬には「Project Aurora」(コードネーム)と呼ばれるファイルサーバ向けのECMソリューションをリリースし、Notes以外のアプリケーションやデータストレージにも、対応の幅を広げていくという。
「2000年の創業以来、KMの分野で蓄積したノウハウを元に、現在、特に欧米での注目が高いECMの市場に参入する。IBM、マイクロソフト、グーグルなど、“巨人”の多い市場だが、2010年には、グローバルでのマーケットリーダーとなることを目指す」(リアルコム、代表取締役社長兼CEOの谷本肇氏)