--他の業界ではどういったニーズがあるのでしょうか。
Wick氏: これまでは金融業界、官公庁などでの利用が多かったのですが、今は製造業界や通信業界での利用も広まっています。例えばメーカーの場合、製品デザインなどを元に製造部分をアウトソースするケースがありますが、その際パートナーとデザインを共有する必要があります。しかしその部分は知的財産にも関わる企業秘密が含まれているため、安全性が求められます。
LiveCycleでは、メールに添付して送ったフォームもアクセス権限を限定できます。契約が切れた企業に送ったドキュメントは、もうアクセスできないようにするといったこともできるのです。
近い将来ポリシーサーバでCAD(Computer Aided Design)のフォーマットを保護する機能を発表します。まずは10月に、CADのひとつであるCATIA(Computer graphics Aided Three dimensional Interactive Application)をサポートする予定です。CATIAは自動車産業や航空宇宙産業などの複雑なデザイン分野でよく使われています。
すでにAdobeの顧客の中にはメーカーも多いのですが、その中でも需要が高かったのがこうしたフォーマットを安全な環境でやりとりできるということでした。
--2005年12月にMacromediaを買収しましたが、LiveCycleとMacromediaの製品は統合されるのでしょうか。
Wick氏: はい。特に、Flashベースのアプリケーションの開発環境Flexについては、2007年前半には統合が実現するでしょう。これにより、データの取り込みを自動化できるほか、データの視覚化も可能になります。Macromediaを買収した際、Flexのフロントエンドを使ってワークフローを自動化するデモを行ったのですが、これは大変評判のよいものでした。FlexとPDFのいいとこどりですね。他の機能についての予定はまだ決まっていません。
--LiveCycleの競合となる製品はどういうものでしょうか。またそういった製品に対するLiveCycleの強みはどこにあるのでしょう。
Wick氏: LiveCycleの特徴は、電子フォーム機能やVPN、ワークフロー技術、暗号化や電子署名をはじめとするセキュリティ機能など、アウトプットコンポーネントがすべてまとめて提供できることです。一部分の製品において競合製品はありますが、LiveCycleはこれらすべての機能をまとめて提供できるのが強みです。
IBMやMicrosoftも電子フォーム機能は提供しており、われわれに追いつこうとしています。またIBMは、2005年7月に電子フォームソフトウェアメーカーのPureEdge Solutionsを買収しました。PureEdgeの製品では、プロセスデザインやVPN機能、暗号化などのセキュリティ機能が提供されています。
ただ、一番重要なのはわれわれのReaderがほとんどのPC環境で使われているという点です。Microsoftのフォーム機能やセキュリティ機能は、Officeの特定のバージョンなどにのみ対応しているに過ぎません。IMBでは、特定のソフトウェアをダウンロードしなくてはならないのです。
外部とやりとりをする際、相手が同じクライアント環境にあるかどうかはわからないものです。わざわざ新しいソフトをダウンロードしてほしいと言って受け入れられるとも限りません。LiveCycleは、ほとんどのクライアントで使われているAdobe Readerを活用できるのが強みです。
--しかし、Microsoftの製品も多くの人が使っています。Microsoftを脅威と感じませんか。
Wick氏: 確かにMicrosoftは怖い存在です。しかしLiveCycleはクロスプラットフォームで柔軟性があります。PDFはビジネス文書として標準になりつつあり、十分に戦う余地はあると思っています。