製造業の分野においては、これまでも業績向上を最終的な目的とした積極的なシステム投資が行われてきた。特に大規模企業においては、タイム・トゥー・マーケットの短縮や効率的な生産計画を実現するためのシステム構築が一巡し、次の段階へと進みつつある。そうしたシステムから吐き出される膨大な量のデータの中から、いかに価値を導き出すかといったテーマ、つまりビジネスインテリジェンス(BI)が、改めて注目を集めている。製造業におけるBIの最新動向や活用事例について、CognosでManufacturing Industry Solutionsのディレクターを務める、Paul Hoy氏に話を聞いた。
--特に製造業の分野におけるBIの役割について、考えを聞かせてください。
今は、製造業の中のBIを考えるにあたり、特に面白い時期であると思います。製造業の方々は、自らのビジネスに対する新たなソリューションや改善策の実現のために、さまざまなアプリケーションを導入するなど、ソフトウェアやシステムに対する投資を積極的に行ってきました。また、その取り組みも先進的なものが多いのです。
その究極の目的は、自社の業績を少しでも改善するということにあったと思います。しかし、ERPをはじめとするトランザクション系のシステムから吐き出される、膨大なデータの中から、いかに価値を引き出すかという点で苦労をされている方が多いのではないでしょうか。
その問題を解決するために、今日ではBIやパフォーマンスマネジメントと呼ばれるジャンルのシステムがあります。これは、業績の改善のために行うべきアクションは何なのか、どの業務もしくはどの分野に積極的に取り組めば良いのかを理解し、適切な対策を講じるための助けとなるものです。
今が、製造業にとってBIの導入検討や取り組みを開始するのに最適な時機であると私が考える理由のひとつは、製造業に対する顧客の要望が大きく変化している点にあります。それは、日本で言う「多品種小ロット」に象徴されるように、製品に対する顧客の細かい要求に合った製品を供給することが求められるようになっているということです。また、もうひとつはオフショアによって、生産拠点が中国など、海外に移動するようになっているという現状です。これらの状況から、ビジネス全体のプロセスは複雑化し、それを適切に把握するのが困難になっているのです。
サービスや作業全体の効率を上げようとする場合、サプライチェーンの全体像をどのように把握するかが課題になってきます。BIというツールなくしては、コスト、顧客サービス、生産業務、オペレーション全体に対する理解を深め、それらを適切に把握することは極めて困難です。