NECが発表した同社の新しいITプラットフォームビジョン「REAL IT PLATFORM」をテーマにしたセミナーが、2006年10月18日に都内のホテルで開催された。
冒頭の基調講演には、アイ・ティ・アール(ITR)代表取締役の内山悟志氏が登壇。「IT投資管理と中長期ITインフラ計画のあり方」と題し、IT投資の効果を最大にするための投資管理のあり方と、ビジネス戦略を支えるITインフラ計画化の必要性について述べた。
IT支出の6割を占める定常費用が負担に
講演の冒頭、内山氏は、あるビジネス誌上で行われたIT動向調査の結果を引用し、企業の売上高に占めるIT支出の割合を示した。この「IT支出」とは、定常費用(既存システムの維持、機能拡張などに係る費用)と、戦略投資(新規システム構築、大規模リプレースなど)の2つを表すものだ。この数年間、それらは増加し続け、2005年度には定常費用と戦略投資を合わせて、売上高の2.8%を占めるに至ったという。
一方、米国でのIT支出は、数年前から3.6〜4%程度で推移しているという。それを鑑みると、日本での値は特に多いとはいえないが、毎年定常費用の比率が増加しているにもかかわらず、戦略投資はそれほど伸びておらず、6割以上を占める定常費用が重くのしかかっているのが実態だという。
そこで、「IT投資ポートフォリオ管理の重要性がクローズアップされる」と内山氏は語る。IT投資ポートフォリオ管理では、個々のプロジェクトや投資案件ごとに、事前に目標を立て、導入された後も当初の目標が達成されているかを事後評価し改善につなげるといった、小さなPDCAを回していくことが重要となる。
また、次々に蓄積されていく情報システム資産に関して、それらの活用度や業務貢献度などを棚卸しし、資産評価をIT戦略にフィードバックしていく大きなPDCAサイクルの確立も必要だ。定例的にIT投資の傾向や配分をデータ化して、次のIT戦略へフィードバックしていくことが求められているという。
投資目的ごとに評価指標を立てて効果を測定
「IT投資はやりっぱなしではなく、事後評価が非常に大事。IT部門には、逐次企業情報システム全体を俯瞰して、システムが適切に活用されているかどうかを評価するなど、経営者に対する説明責任がある」と指摘する内山氏は、それがIT部門のレベルアップを実現し、ひいては社内に向けた発言力や地位向上のための足がかりになると語る。
ただし、IT投資というものは、ROIを定量的に表現できないのが悩みでもある。売上に直接貢献するものもあれば、リスク回避やコスト削減を目指すものなど、IT投資には様々なものが存在するため、目的や性質の異なる投資案件を一律に金額換算して、投資効果を求めようとするところに大きな無理があるのだ。
そこで、投資目的ごとにタイプを分け、個々に評価指標を立てて効果測定することが有効となる。内山氏は、IT投資を「社会責任」「ITインフラ」「業務遂行」「競争優位」の4つに分けて考え、これらをKPI(重要業績評価指標)に当てはめてモニタリングし、目的に合った評価をしていくことで、金額換算もしくはスコアによって評価していくことが望ましいとする。
「起案者が、目標の設定と事後評価もきちんと行い、報告することが基本。もし、目標が達成されていなかったり、事後評価に問題があったりした場合には、改善を促す取組みが必要となる」(内山氏)