ビジネスアプリケーション大手SAPの幹部によれば、同社は2006年、エンドユーザーが簡単にコラボレーションを実現し、生産性を向上させていけるような機能の強化に取り組む意向だという。
こうした追加機能は、「wiki」と呼ばれる共有ウェブページに代表されるWeb 2.0技術、オンライン掲示板、ミニアプリケーションのウィジェットなどを核として開発されている。SAP製品を利用しているデスクワーカー同士のコラボレーションを容易にすることがその目的だ。
SAP Labsで先進ソリューション担当ゼネラルマネージャーを務めるDennis Moore氏は、「コミュニティ志向のツール開発を目指すのは、チームで動く情報労働者に製品を提供している企業としてごく自然な流れだ。顧客も、そうした機能を望んでいる。共有可能なデータを蓄積してきた企業が今必要としているのは、それらを活用する手段なのだ」と述べた。
新たな個人生産性ツールは、SAPのビジネスアプリケーションスイートユーザーに対し、2007年中に順次提供するという。
エンドユーザー向けのコラボレーション機能強化に乗り出しているのは、SAPだけではない。米国時間1月22日には、IBMがWeb 2.0戦略を発表し、ブログやwikiなどのソーシャルネットワーキング機能を「Lotus」スイートおよびポータルソフトウェアに組み込む、2種の新たなツールをリリースしている。
大手のビジネスソフトウェア企業は、エンドユーザーの生産性向上に投資することで、顧客側のアップグレードを促進しようともくろんでいる。SAPは、2006年の販売目標を達成できない見込みであることを、1月初めに明らかにしていた。
Moore氏は、人々が多くのWeb 2.0ツールは無料であるものと前提しているため、エンドユーザー向けの新機能から金銭的利益を得ていく方法はSAPにもまだ分かっていないと話す。それでも、顧客の満足度を上げることが重要だという。
例えばSAPは、開発したウィジェットを同社の中核的なアプリケーションに追加する取り組みを進めている。通常ウィジェットは、1つのタスクを実行する小型のアプリケーションという形を取る。
このウィジェットのおかげで、SAPアプリケーションの使い勝手は格段によくなると、Moore氏は話している。顧客のアカウント情報が更新された際にポップアップするウィジェットを営業担当者が作成したり、企業システムを検索するウィジェットを個人のデスクトップに設置したりといったことが可能になるのだ。
「これまでのエンタープライズアプリケーションでは、アプリケーションを読み込み、起動して、検索機能がどこにあるのか探さなければならなかった」(Moore氏)
Moore氏によれば、しばしばEnterprise 2.0とも言い表される、ビジネスでのWeb 2.0技術の利用には、従来とは異なる条件が付帯するという。
具体的には、企業はよりきめ細かいデータセキュリティおよびアクセス管理を実現し、販売注文もしくは財政データなどの情報をビジネスアプリケーションから取得できるようにしておかねばならない。
SAPのユーザー生産性向上担当ソリューションマーケティングディレクターAndrew Cabanski-Dunning氏は、同社は「NetWeaver」インフラストラクチャに改良を加え、SAPの従来のクライアントソフトウェアやウェブベースクライアント、ポータル、携帯デバイス、ウィジェットといった多様な形式から、SAPデータにアクセスできるようにしていくと述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ