2001年に日本市場に参入し、2007年には拡大路線を狙うファストサーチ&トランスファ。同社は2月21日、日本市場での積極展開を目指し、戦略説明会を開催した。
登壇した同社 代表取締役社長の徳末哲一氏は、2006年1月に同ポジションに就いたばかり。徳末氏は、現在の検索市場について「20年以上前にMicrosoftやSun Microsystems、Oracleといったシステムの中核を作る専業ベンダーが次々と登場し、飛躍的な発展を遂げた頃と匹敵するような流れが現在のサーチにある」と述べている。
ファストの本社であるFast Search & Transferは、元来一般向けインターネット検索サービスを提供する企業として1997年にノルウェーで創業した。その後、一般向けのalltheweb.comをOverture(現Yahoo!の子会社)に売却し、AltaVistaの企業部門を買収することで、現在は企業向けの検索エンジンを提供することに特化している。
徳末氏は、「Gartnerの評価でも、企業における情報アクセスという観点においてはFastがGoogleやIBMをはるかに上回っている」とアピール。それは、「利益率の高い製品、在庫の多いもの、ユーザーに役立ちそうな情報など、企業の論理が反映された結果を出せるからだ」とした。
同社のテクノロジは、人や場所、会社、日付といったエンティティを抽出することで、より関連性の高い情報を提供するというものだ。徳末氏は、従来のドキュメントレベルでの検索によって「business intelligence」というキーワードで企業を検索した場合、BIとは関連性のないWashington PostやCBS、CNNなども結果に含まれてしまうが、「ファストでは文章レベルで検索を行うため、OracleやSAP、Cognos、Hyperion、Business Objectsといったように、BIベンダーがちゃんと検索される」と例を挙げた。「誰が何を探しているのかを考えた、ユーザー思いのサーチでなくてはならない」(徳末氏)
他にも徳末氏は、ユーザー中心の検索を実現した事例として、同社顧客の楽天を紹介した。楽天には1500万以上の商品数があるが、検索結果からできるだけ少ないクリック数でユーザーの希望する商品に到達できるような仕組みを確立したほか、ヒット数ゼロという結果も防止するようにして、顧客離反を抑制している。
また、徳末氏はファストのコアコンピテンスのひとつとして、音声や画像などのマルチメディアの圧縮検索技術を挙げた。こうした技術を活用し、例えばReuterでは自社の情報や写真が無断で利用されていないか、日々ウェブをチェックしているという。
日本での展開については、「メインターゲットとする市場を、金融、キャリア、メディア&エンターテインメント、製造業とし、日本にもR&D拠点を置く」と徳末氏。実際に、現在約30名の社員のうち、5名程度はR&D担当だという。特に、日本語のエンティティを充実させ、日本語化対応プロセスの標準化を進めるとしている。
「サーチで重要なことは、自分の言葉に置き換えて答えを教えてくれるかどうか、サーチが自分を理解してくれているかどうかだ。ユーザーセントリックであることを忘れてはならない」(徳末氏)