万川集海 第10回:あったらいいなを実現--ストレージの仮想化はなぜお得なのか

小菅芳道(日本IBM) 2007年03月22日 08時00分

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生活の知恵

 商品をなるべく安く購入したい時にまとめ買いをするというのは、世に広く知られた知恵である。1個買うよりも10個まとめて買ったほうが1個あたりの商品の値段は安くなることが多い。小さなサイズの商品を買うよりも大きなサイズの商品を買ったほうが、普通は量と比較すると値段は安くなるものである。

 昔は大家族の世帯が多く、このようなまとめ買いをしても、ある程度問題なく消費することができた。しかし、現在は1人暮らしの世帯や小家族の世帯がほとんどだ。まとめて買って安く上げたつもりが、賞味期限が切れてしまったり、使い切れなかったりして、結果として無駄にしてしまったことはないだろうか。コンビニへ行くと、このような需要に合わせて少量の商品が数多く取り揃えてある。しかし、無駄なく使いきれる少量のものは、やはり値段的には高くついてしまう。安く、しかも少量の買い物ができないだろうか。

 これが、あるのである。別に特別な方法ではない。個人でまとめ買いをするのではなく、皆でまとめ買いをするのである。例えば、ご近所、数世帯で共同してまとめ買いを行い、それを小分けにすればよいのだ。1人暮らしの世帯もあれば、4人家族の世帯もあるだろう。その消費量に合わせて分ければよいのである。数世帯ではなく、数十世帯であればどうだろう。更なるまとめ買いの効果が期待される。世帯数が多くなれば「今週は旅行へ行くので何も欲しくない」、「明日は親戚が来るので余分に欲しい」といった、いつもとは違った状況にも柔軟に対応できる。

コンピュータの小家族化

 実は、コンピュータのディスクの世界でも似たようなことが起こっている。以前はホストと呼ばれる大型のコンピュータが1台あるだけだったので、大きなディスクがあってもそれを占有して使えば良かった。しかし、小型のコンピュータが世の中に普及するに従って、状況は変わった。

 昔と異なり、1つの企業に何百台ものコンピュータが使われるような光景は珍しくない。小型のコンピュータにはそれ専用の内蔵ディスクが必要だ。これは核家族化や1人暮らしの世帯が増えたという社会状況に非常に良く似ている。ディスクが足りなくなる度に少量のディスクを買って増設しなければならない。たとえ他の小型コンピュータに内蔵されたディスクに余裕があっても、それを別のコンピュータで使いまわすことはできない。それぞれの小家族が少量ずつ割高な商品を買う、まさにこの構図である。

お得な仮想化生活

 このような状況を解決してくれるのが、ストレージの仮想化だ。「仮想化と言うことは実体がない、つまり、金だけ払って商品がもらえないのか?」と心配される方もいるかもしれないが、ご安心あれ、そんなことはない。ストレージの仮想化とは、複数の様々な種類のディスクをまとめて購入し、それぞれのサーバに必要な分だけ適宜ディスクを分け与えてくれる仕組みなのだ。

 仮想化環境では、あらかじめまとめ買いしてあるディスクから少量のディスクをもらえばよいことになる。返品にも対応できる。つまり、いらなくなった仮想ディスクは返せばよいのだ。返されたディスクはまとめ買いされたディスクと共に、他のサーバが必要な時に必要な分だけ使ってくれる。そう、ストレージの仮想化は、リサイクルまでやってくれるのだ。なんと環境にやさしいのだろう。実は仮想化は、返品だけでなく、交換にも対応してくれる。しかも、知らないうちに。

魔法を使ってお引越し

 ディスクはデータを入れた家のようなものだ。この家は、使える期間がある程度決まっている。簡単に言うと寿命である。つまり、古くなったら家を引っ越さなくてはならないのだ。家の引っ越しは大変だ。家財を梱包し、家具を持ち出し、トラックに載せ、新しい家で荷解きをして食器や本などを再度家具に入れなおさねばならない。

 ディスクの引っ越しも、古いディスクに入っていたデータをどこかに退避させ、新しく買ったディスクにデータを戻す作業が必要となる。ところが、ストレージの仮想化を使うと、日常生活をしながら、いつの間にか新しい家への引っ越しができてしまう。面倒な引っ越し作業をする必要がないのだ。不思議に思われるかもしれないが、使っているディスクがいつの間にか新しくなり、ユーザーは引っ越しに全く気づかないのだ。

 技術の進歩とは、実に夢のような世界を実現してくれるものだ。ストレージの仮想化を使えば、ディスクの単価が安くなり、サーバからの返品が自由となり、交換もいつの間にかできてしまうのだ。魔法のようにも聞こえるが、魔法ではない。その仕組みを知れば、仮想化は「あ、そうか」と納得していただけるはずだ。

あったらいいなを実現 - 小菅 芳道
第10回筆者紹介あったらいいなを実現

小菅 芳道 (こすげ よしみち)
日本IBM システム・ストレージ ATS
ICP ITスペシャリスト
職務:ストレージソリューションの技術支援
一言:私がコンピュータに関わり始めた大昔、優秀なプログラマはコンパイラを使わずにアセンブラを使っていました。アセンブラで緻密に作ったプログラムの方が効率が良いからです。しかし、プログラムが巨大化、複雑化した現在、プログラムはその管理のしやすさが重要視され、効率の悪さはCPUのパワーでカバーされています。ストレージの世界もデータ量の増加と共に、近い将来管理のしやすさがより重視され、効率の悪さはストレージの高性能化でカバーされる時代が来るのではないかと思います。今回紹介するストレージの仮想化は、まさにその入口です。

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