万川集海 第15回:偽装結婚に自由恋愛--高速コピー機能のお話

高井泰生(日本IBM)

2007-04-26 08:00

出会いと別れ

 たまたま出席した同窓会や懇親会、仕事絡みのパーティーや打ち上げ、親戚や友人の結婚披露宴などで偶然出会った人と意気投合することがある。人と人の縁とは不思議なものだ。それも男女の間柄であれば一瞬で恋に落ち、全てを捧げてしまうこともある。そしてそのまま結婚してしまうことも。

 このような縁は何も人と人だけの話ではない。偶然同じ筐体内に居合わせたディスク同士が、システム管理者の都合で出会い、一瞬にして恋に落ち、全てを捧げて相手と同じ内容になる機能がある。ディスク装置に搭載された高速コピー機能がそれだ。筐体内の2つのディスクをソース(コピー元)とターゲット(コピー先)をペアにし、仲人役のシステム管理者が機能を実行すると、ソースディスクの内容が一瞬にしてターゲットディスクにコピーされてしまうのだ。まるで一目惚れしたかのように。

 この高速機能を実現する方法は、実際の世界では機械の種類によって千差万別だ。しかし大別すると、偽装結婚型(ポインターコピー方式)、自由恋愛型(バックグラウンドコピー方式)、偽装離婚型(スプリットミラー方式)の3つに分類することができる。

偽装結婚型

 偽装結婚型は、世間的には恋に落ちて即結婚したかのように見せて、その目的のために形式的には離婚はしないが、実質的には一緒に暮らさないという偽装結婚のようなやり方だ。

 仕組みとしては機能の実行により、一瞬で同じ内容になったように見せるが、実はデータの在りかを指し示すポインタをコピーしただけで、実データはコピーしないのだ。つまり、偽装結婚のような見せかけのコピー方式といえる。このやり方はデータを実際には全くコピーしないので、本当はコピーするために2倍の容量が必要となる部分が節約できるので、節約型と言っても良い。この方式は「SnapShot」と呼ばれることもある。

 当然ながらコピー先のディスクを使用するためには、2つのディスクをコピーの関係にずっと維持しておく必要がある。そのため偽装結婚が世間的に結婚しているかのように見せる努力が常に必要なのと同様に、コピー元のディスクには常に負担がかかることになる。これは、負荷が増えてパフォーマンス的に遅くなってしまう可能性があることを意味している。

自由恋愛型

 自由恋愛型は、恋に落ちて全てを捧げた後に、2人の努力により無事結婚式を挙げ、新婚旅行を満喫してお互いの全てを理解したら、アッサリと2人の関係を清算できるやり方だ。

 結婚に例えると、成田でサヨナラといった感じかもしれない。初めは偽装結婚型のようにポインターだけをコピーし、一瞬にして同じ内容になったように見えるので、最初の手口は偽装結婚型と大差はない。しかし異なるのはその後である。最初は実際にコピー先にはデータがコピーされていないが、お互いの努力でソースディスクの内容をターゲットディスクにコピーさせていくのである。データが完全にコピーされると、ターゲットディスクにとってソースディスクはもはや用済みで、お互いに関係していたという事実を残す必要はないため、独立してお互いの人生を独自に歩んでいくのである。完全に自由になってしまうのだから、どちらも別の相手と付き合ってもかまわない。

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