「日本で一番オープンソースが盛んな県は新潟県」――。
オープンソースソフトウェア(OSS)を軸とした地方の取り組みは至る所で見受けられるようになっているが、新潟の場合、Linuxディストリビューションそのものを開発してしまおうという取り組みが続けられている。ディストリビューションの名称もズバリ「Niigata Linux」だ。
Niigata Linuxを開発するのは、2005年4月に設立された特定非営利活動法人(NPO法人)の新潟オープンソース協会。同協会は、新潟という地方経済圏で、産業興しのタネとしてOSSに注目。他県に先駆けて新潟県が日本で一番オープンソースが盛んな県になって、特異なソフトウェア集積地になることを目指している。その活動の中心となっているのが、Niigata Linuxの開発である。
新潟オープンソース協会では、新潟県内でのOSSの普及促進を目的にしたイベント「新潟オープンソースカンファレンス」を定期的に開催しており、5月19日に5回目となる「新潟オープンソースカンファレンス2007春」を催している。その中で、同協会の正会員である湯川高志氏(長岡技術科学大学助教授)が「Niigata Linux 3.0の開発計画」というテーマで講演をしている。
開発環境のためのLinux
「中身をどうするかより、まず名前が決まった」(湯川氏)というNiigata Linuxだが、そのコンセプトはビジネスでの利用を意識して、システム開発やシステムインテグレーションのプラットフォームとして使えるものを目指している。より具体的には、データベース(DB)、アプリケーションサーバ、ウェブサーバの3層モデルのウェブアプリケーション開発の基盤になることに目的を絞り込んでいる。
そうした目的で開発されたNiigata Linux 1.0が目指したのは、LAPP(Linux、Apache、PostgreSQL、PHP)のための開発環境をCD-ROM1枚のインストールで構築できるLinuxディストリビューションである。また、その特徴としては、「Windowsでしか開発の経験がない」(同氏)という開発者の利用を促すために、Windows環境のみでもモジュール単体レベルでの開発が可能なように、Linuxに搭載したソフトウェア(ミドルウェア)と同じもののWindows版が同一のCD-ROMに収録されている。
Niigata Linux 1.0の利用モデルは以下のように想定していた。Niigata Linuxをインストールしたサーバと、Windows環境のクライアントPCからLinuxサーバを管理。クライアントPCで個別モジュールを開発して、結合試験をローカルネット内で行うという利用モデルだ。ここで興味深いのは、Niigata Linux 1.0は開発環境のためであって、本番の運用には使わないというものだ。このことについて、湯川氏は「セキュリティ設定が決まっていなかったため」としている。