Matz:コード補完を実現しているのがすごい--CodeGear Ruby IDE

大野晋一(編集部) 2007年06月05日 13時41分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 まつもとゆきひろ氏が「元々は趣味プロジェクト。自分でできる範囲でがんばってきた」というRuby言語の開発、趣味から始まり、アーリーアダプターたちに受け、現在はRuby on Railsによる注目もあってアーリーマジョリティーからレイトマジョリティーの境目というとことだろうか。

 こうした出自も手伝って、普及するにはいま一歩な点もある(どの言語も最初はそうだ)。「IDEや高速なコンパイラなどは一人で手がけるには無理があった」とまつもとゆきひろ氏。しかし、状況は変わりつつある。NetBeans 6でのRubyサポート、Eclipseで使用可能なRubyプラグイン、Rubyを高速に実行可能なYARVなどなど、「様々な投資により、様々な特徴を持つ製品が出てきて、切磋琢磨している」(同氏)。

 5月14日、CodeGearはRailsConf 2007においてRubyの開発を強力にサポートする統合開発環境を発表した。5日、このRuby IDEが、都内で開催された「第5回 CodeGear デベロッパーキャンプ」にて国内お披露目となった。まつもとゆきひろ氏もこの場に現れ、「若かりしころ、Turbo PascalやTurbo Cでプログラミングをしていたことがある。そのBorland(現CodeGear)が自分のデザインしたRubyをサポートするのは光栄」と賛辞を送った。

 CodeGearのRuby IDEは2007年後半に提供開始予定。Windows/Linux/Mac OS Xがサポートされる。ちなみに、同社サイトでも「Ruby IDE」という表現が使われているが、これは仮称で正式な名前は提供開始までに決定されるとのこと。

 まつもとゆきひろ氏は、「かつて、初学者が学ぶ言語には制限が多かった。Basicしかり、PHPしかりだ。Rubyは言語自体が持つ制限が少ない。最初は少し大変かもしれないが、それを乗り越えると可能性が広がる」と振り返り、「IDEによってこの障壁が下げられる。初学者の可能性が非常に広がる」とRuby IDEの登場を歓迎する。

 CodeGearでRuby IDEの開発を担当したShelby Sanders氏も「ビギナーとエキスパートが両方満足できる設計とした」とする。ウィザードやビジュアルデザイナを多用し、早く成果物を作りたいという要望と、エディタやコマンドラインを多用し、長期的に生産性を上げたいという要望をともに満たすよう留意した。

 具体的には、Rubyのランタイムはもちろん、Rails、gems、必要なライブラリ、データベースを含むオールインワンのインストーラを提供。また、ウィザードでアプリケーションのロジックコードを生成可能となっている。RailsそのものとIDEの使い方を学習可能なビデオチュートリアルも提供される。

 一方で「コマンドラインの操作性はRails開発のキー」と同氏。RailsスクリプトをIDE内から容易にアクセスできるようになっている。特に、同社がLiveCommandと呼ぶ機能によって、「今何をしているかというコンテキスト情報から、スクリプトの実行を簡単にしている。Railsスクリプトに対しても、コマンド名やオプションに対する補完が可能」(同氏)となっている。

 動的に実装された機能も含み、RubyおよびRails固有のコード補完とリファクタリングをサポートしている点も大きな特徴。「Rubyは動的言語なので、IDEを作る人間にとっては”地獄”のはず。にもかかわらず、コード補完を実現しているのがすごい」(まつもとゆきひろ氏)。動的型付けの言語は実行されるまでどのメソッドが実行されるか予想が難しいという特性があり、コード補完の実装は一般的に困難だ。Shelby Sanders氏は「Railsは規約があるので、これを頼りにがんばった」とする。

 その場でアプリケーションの実行と確認が行える組み込みのウェブサーバや、JavaScriptなどRailsをつかったウェブ開発で使われるものをまとめてデバッグ可能な点も便利だろう。

 CodeGearでデベロッパーリレーションズを担当するDavid Intersimone氏にRubyの未来について聞かれたまつもとゆきひろ氏は「(具体的な)未来はわかりませんが」と前置きした上で「これからのキーワードはスケーラビリティ」とする。「たくさんの開発者たくさんのチームによって開発される、巨大なデータやトラフィックを扱う、マルチコアなどの巨大なマシンリソースをフルに活用する――こうしたスケーラビリティを追求したい」(同氏)。

とはいえ、一般的な用途についてはすでに充分と見ているようだ。「(今現在)エンタープライズで使えるかといわれると、イエス。例えば、(Railsで作られた)Twitterは毎秒1万以上のアクセスを受けたことがあるという。これは、エンタープライズでの使用でも充分だろう。そこからさらに先、GoogleやeBayクラスのものを作りたいという要望のために拡張したい」(同氏)。

「気象解析をはじめとしたスーパーコンピューティングなど、当初期待したよりはるかに広い範囲でRubyが使われはじめた」とまつもとゆきひろ氏。それでも同氏は「Rubyでプログラミングをすることを楽しんで欲しい」と楽しむためのRubyを強調する。CodeGearのRuby IDEはプログラミングを楽しむ助けになるだろう。

 その次は「Rubyを使ったビジネスをして欲しい」(同氏)とする。様々なビジネスがRubyを使ってくれたおかげでCodeGearのRuby IDEのようなものが登場したわけだ。同氏は、おなじようにして、様々なことがうまく回っていくことを期待するとする。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連キーワード
開発

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
IT部門の苦悩
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
「企業セキュリティの歩き方」
「サイバーセキュリティ未来考」
「ネットワークセキュリティの要諦」
「セキュリティの論点」
スペシャル
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell EMC World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
より賢く活用するためのOSS最新動向
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
米株式動向
日本株展望
企業決算