技術部会でも主要な活動をするアプレッソ
それではアプレッソは、MIJSのなかでどのような役割を果たしていくのか。
現在、MIJSで中心的に活動しているのが技術部会であることは前回も記したとおりだ。実はこの部会のトランザクション連携グループのリーダーを務めているのが小野氏なのである。技術部会ではデータ連携のための共通仕様と規格を策定中だが、これについて小野氏は次のように語る。
「これまで、たとえば“名前”というデータは業務アプリケーションごとに別々に持っていたわけです。それもあるアプリケーションでは姓と名がわかれていたのが、別のものでは連結されていたりという風に、データを保持する形式もアプリケーションによって異なります。社員がひとり増えただけで何度も入力しなければならず、手間がかかる上に入力ミスの可能性も高くなるわけです」
そこで技術部会では、各種連携に必要となってくるデータ形式に関する標準規格の策定を進めている。その第一弾として、現在は社員データや仕訳データの規格の策定に取り組んでいる。
各社のデータの持ち方を検討し、それぞれの長所を取り入れながら、MIJS標準として統一されたフォーマットをまとめ上げていく。策定にあたって注意しているのは、コンセプトだけではなく、実際に機能する仕様としてMIJS標準を位置づけていくという点だ。
「よくある失敗はバージョン1.0の仕様で実装してみて、何らかの不都合がでたときには、次のバージョンの仕様で対処しますという方法です」と同氏は言う。次のバージョンを開発しているうちにもっと使いやすい規格が登場し、デファクトとなってしまう。
こうした問題を防ぐためにも、実運用で問題が起こらないかどうかを、実際にプロトタイプを開発しながら仕様を決めていくというプロセスをとることにした。この規格は2007年秋頃に発表の予定だ。
技術的リスクが大幅に低減
小野氏から見たMIJSのメリットとはどんなものだろうか。同氏はまず「接続検証」という言葉を持ち出した。
「エンタープライズシステムの世界では、こういった種類のシステムに実績はあるか、ということがいつも問われます。理論的にはデータベース同士で接続できる、というような場合にも、アプリケーションの組み合わせパターンで特殊な処理をしなければならなかったり、ワークアラウンド的な処理をしなければいけない場合もあります。ですから、そのあたりも踏まえて連携が本当に可能なのか、ということを確認するために、過去に同様のシステムを扱ったことがあるかのかどうかといった実績を問われることが多くあります」(小野氏)
「その点、MIJSの参加企業が集まれば少なくとも事前に検証ができる。これにより技術的なリスクが大幅に減少できます」という小野氏。アプリケーション連携には数多くの組み合わせパターンがある中で、こうした検証が事前に行えることによる技術的恩恵は大きいようだ。
同氏はアプレッソのMIJSへの貢献の例としてサービス指向アーキテクチャ(SOA)の実現も挙げている。DataSpiderはWebサービスにも対応しており、データ連携基盤だけでなく、SOA 基盤として利用することができるようになっている。この機能を使えばWebサービスに対応していないアプリケーションも、Webサービスとして各種の処理やデータのインターフェースを提供していくことができる。
「手ざわり」に磨きをかけて海外へ
MIJSのもうひとつの柱が海外進出であるが、この業務に携わっているのが長谷川氏だ。「実はアプレッソも過去に米国市場に挑戦して撤退しました」と語る。「日本のソフトウェアは本当に親切に作ってあります。こんな機能までというくらいです。ところがこういう点は海外ではまったく評価されないのです」と長谷川氏。
「評価されるのは、もっとベースの機能面なのです。たとえば英語が読めない社員でも入力ミスをしないようにとか、必要最小限な機能を重視する。ところが日本の製品はさらにどこか“手ざわり”が違うんです」と長谷川氏。MIJSが海外に進出するにはこうした点を強調させることが必要だと同氏は考えている。
「まずは日系企業から攻めていくのが常道かなと思っています。米国経済のなかでも日系企業の生産額は相当な割合を占めているでしょうからそこを狙っていきたいと思っています。しかし中国進出のほうが早いかもしれません。すでにMIJSメンバーで中国進出を果たしている会社がありますから」と話している。
製品連携のうえで中核となるアプレッソのDataSpider。技術的に大きく貢献し、今後とも連携先のアプリケーションをどんどん増やしていく予定だ。
