NTTコミュニケーションズは2003年12月に、Liberty Allianceが認定した認証連携仕様「ID-FF 1.1」に基づく統合認証プラットフォームを実装した個人向けサービスの提供を開始した。世界で初めて提供されたLiberty仕様の商用サービスと言われる。このサービスは、NTT研究所のアイデンティティ(ID)情報流通技術「I-dLive」をベースにしたNTTソフトウェアのID連携モジュール「TrustBind/Federation Manager」を利用している。同社の取り組みについて聞いた。
Liberty準拠の「マスターID」
NTTコミュニケーションズはLiberty Alliance Projectのメンバーではない。NTTの研究所やNTTソフトウェアが生み出す技術やプロダクトを、自らのビジネスに活用する立場にある。いわばLiberty Allianceの技術を商用で活用する企業ユーザーといえる。ご存知のとおり、同社はNTTグループにおいてインターネットで事業を展開する企業だ。インターネット接続サービスであるOCNをはじめ、有料の各種個人向けサービスや法人向けサービスを提供する。
NTTコミュニケーションズがLiberty仕様の統合認証プラットフォームを開発した背景はこうだ。同社では歴史的な経緯から、提供するそれぞれのサービスが自律分散的に構築されてきた。サービスごとに顧客情報が管理されており、そうした状態はサービスマネジメントの観点からも、情報マネジメントの観点からも好ましくない。そこで「顧客に対しては一枚岩で対応すべき」と考え、顧客情報管理のあり方を改善したいと考えていた。そうした中、タイミングよくNTTの研究所がLiberty Alliance Projectに参加し、顧客情報を束ねるスキームとして、いち早くプロダクトを出したことが商用サービスの開発につながった。
同社が開発したのは「マスターID」と呼ぶ商用サービス。NTTソフトウェアのアイデンティティ連携モジュール「TrustBind/Federation Manager」をコアに、実際にサービスとして安定して提供するうえで必要となる管理系や運用系の機能、さらには同意確認等を行うための画面を構築した。マスターIDを使えば、ユーザーはログインが必要な8つのサービスにシングルサインオン(SOO)で入ることができる。一度ログインすれば、電話料金の明細を見たり、ポイントサービスでポイントを確認したり、ファイル共有サービスを利用したりできる。
共同プロモーションや応用ビジネスの展開も
2007年7月に同社は、NTTレゾナントが運営するポータルサイトgooで提供している会員IDの「gooID」とマスターIDとを連携させるサービスも開始している。マスターIDを使ってログインしたユーザーは、gooIDと連携できるためログインし直す必要がない。逆にgooの会員は、gooIDでNTTコミュニケーションズの各種サービスにSSOすることもできる。
NTTコミュニケーションズ ネットビジネス事業本部 CRMシステム部 サービスプラットフォームグループ 担当課長である堀川桂太郎氏は、gooと認証連携した意義について、次のように説明する。
「gooはポータルビジネスであり、ページビューや滞在時間が増えるほどサイトの価値が高まる無料サービス系のビジネスだ。一方、当社は有料サービスを中心としたビジネスを展開している。NTTグループにおいて無料系と有料系で棲み分けができているのだから、バラバラに存在するのではなく、互いに連携すべきだと考えた」(堀川氏)
OCNの会員は約600万人、gooのユーザーは約800万を数える。gooのユーザーが、NTTコミュニケーションズのOCNサービスを知ってISPを乗り換えることや、逆にOCNユーザーがgooのポータルサービスを使ってもらうような相乗効果を狙う。
マスターIDの構築に関与している同社 ネットビジネス事業本部 CRMシステム部 サービスプラットフォームグループの島田健一郎氏は、「gooIDとの連携の成果について評価するのはこれからだ。現状はつなぐことができた段階であって、両社共同でのプロモーションや応用ビジネスは今後展開していくことになる」と語る。
堀川氏も「太い道ができたばかり。この道の周りにどのような店やサービス、あるいは広告展開できるのかを、両社のワーキンググループで検討している」と続ける。堀川氏や島田氏らは、技術サイドからアプローチし、基盤を整備して、新しいサービスがいつでも展開できるよう準備している。堀川氏らは、キラーコンテンツが出てくればgooIDとの連携はより活性化してくるだろうと見ている。