次世代のために行動する起源と今
ソニーは設立から13年後というまだ経営も安定していないころ、すでに理科教育を支援するための基金を設立した。それを発展させたのがソニー教育財団であり、2009年に設立50周年を迎える。創業者の井深大氏が、理科教育を重要テーマに位置付けていたことからなる、ソニー教育財団の学校支援活動は、まもなく5000校に達するという。継続的な活動が一つの節目を迎えようとしている。
エレクトロニクス業界の雄である同社は、業界標準の取り組みにも積極的だ。近年、注目を集めるサプライチェーン・マネジメントでは、グローバルな「CSR調達」を目的としたアライアンスを形成している。「電子業界行動規範(Electronic Industry Code of Conduct:EICC)グループ」は、電子業界におけるサプライチェーンにわたるCSR管理を効率的かつ効果的に進めるため、2004年に設立され、(2007年4月時点で)25の企業が参加。同社は設立当初から運営委員の1社として活動している。資材や部品の調達に限らず、将来的には製造・廃棄といった各領域にも踏み込んだ、総合的なCSR管理へと発展させる継続性が期待される。
社員とともに取り組む社会貢献
「グローバル・ローカライゼーション(グローバルな経営に基づいた現地化の推進)」という同社の基本理念のもと、各国の社員がボランティアに取り組んでいる。16万人の社員の内、約23000人もの社員が、さまざまなボランティア活動に取り組み、会社もまたその活動を支援している。
誰かがあなたを必要としている(Someone Needs You:頭文字でSonyを表す)――地域社会との豊かな関係づくりを目指す、同社の社員向けのボランティア活動推進プログラムの名前である。環境保護、地域支援、砂漠の清掃活動――世界各地のソニーグループ会社が、それぞれの地域のニーズに応じたボランティアプログラムを検討・企画し、社員への参加を呼びかけている。ソニーでは社員によるボランティア活動を支援するため、積立休暇、ボランティア休職などの制度を2007年4月から改定し、支援する環境をさらに充実させている。
特筆したいのが、義援金(慈善や被災者救済のためなどに寄付する金銭)などの募金活動のシステムだ。元来、会社として社員に義援金の募集をする際には、銀行口座を用意して、そこに社員が振り込むといったシステムである。このシステムだと、銀行に行くための時間を作るといった、タイミングの問題が「募金をしたい」と考える社員の機会損失を起こしている。
そこで同社では募金方法を複数用意した。社員の多くが口座を開設する、ソニー銀行では社員募金における振込手数料を無料にした。社員が持つソニーファミリーカード(クレジットカード)での募金も受け付けており、2006年からは、ソニーの社員証にも組み込まれている電子マネーEdy(エディ)を社員募金に導入した。小額の募金がしやすく、VAIO(バイオ)のFeliCa(フェリカ)ポート/パソリからも気軽に募金できるようになったため、飛躍的に募金活動へ参加する社員が増加したそうだ。