Dellは10月29日、米国本社で会長兼CEOを務めるMichael Dell氏の来日記者会見を開催した。同氏は、2月にCEOに復帰したばかりで、これからの戦略の中心は「ITのシンプル化だ」と強調した。
「IT業界で利益を生み出すには2とおりのやり方がある。ITを複雑にするか、シンプルにするかのどちらかだ。競合の多くはITを複雑にして儲けているが、Dellはシンプル化に注力する。シンプル化こそ、顧客の時間やお金、人材の有効活用を実現するキーとなるのだ」(Dell氏)
シンプル化を実現するために、デルではエネルギー消費量を抑えたハードウェア製品を次々と開発しているほか、企業のITシンプル化を評価するためのオンラインツールも提供している。この評価ツールをサービス化することも検討しているという。
Dell氏は「過去23年間、Dellでは顧客に安価でPCを提供するよう努力してきた。しかし多くの企業にとってPCの価格はすでに問題ではなくなっている。それは、PCのメンテナンスやユーザーをサポートすることのほうが、ハードウェアそのものの価格以上にコスト高だからだ」と述べる。そのため同社では、10月10日にPCとサービスをパッケージ化した「On-Demand Desktop Streaming」を米国にて開始した。これは、ハードディスクの入っていないPCに対し、オンデマンドでアプリケーションなどを提供するというサービスで、PC管理の手間を軽減する。日本では現在テスト中だという。
またDellでは、環境にやさしいテクノロジ企業となることを宣言しており、「シンプル化を進めることは環境にもやさしいことを意味する」とDell氏。環境を考慮した試みとして、同社がコンシューマー向けの無料リサイクルサービスを提供していることや、パッケージの簡素化を実現したこと、顧客に「木を植えてください」と呼びかけるプログラムを実践していることなどにも触れた。
小売店とのパートナーシップを強化
コンシューマー向けPCビジネスにおいて、同社はこれまで直販中心だったが、このところ小売店を通じての販売も拡大している。日本ではビックカメラやソフマップでもDell製品が販売されるようになった。このことについてDell氏は、「今後4年間でインターネット人口は10億から20億人の増加が見込まれている。こうした新しいユーザーにわれわれの製品を使ってもらう機会を増やすためにも、販路を増やすことは重要だ」と述べ、今後も直販と並行して小売店とのパートナーシップを拡大する考えを示した。
このところ、IBMがLenovoにPC事業を売却したのにはじまり、日立製作所のPC事業撤退、AcerのGateway買収など、PC業界での再編が進んでいる。Dell氏は、「今後もこうしたM&Aは活発になるだろう。わが社も過去2年に小規模だが5社を買収している。そのうち2社はコンシューマー事業、1社はサービス事業、残りの2社はソフトウェア関連だった」と話す。ただし、同社がPC事業拡大にあたって新たなPCメーカーを買収する予定があるかどうかについては明言を避けた。