さらにフェーズ3は、ECサイトに代表されるバーチャルなビジネスから得られるログなどの定性データとリアルのビジネスから文書として蓄積されるデータを融合して分析することが重要。テキストデータと数値データを組み合わせ、将来のビジネスに生かすEMP(エンタープライズマーケティングプラットフォーム)の実現に対する要望が高まっている。
山本氏は、「BIやPMの仕組みを構築するためには、スピード、柔軟性、コラボレーション、リスク管理といった4つの要素を担保することが大切。がちがちに固めて作るERPより、スピードと柔軟性、リアルタイム性にこたえるBIは、今後ますます重要な仕組みになる」と話している。
BIの理想型と導入アプローチ
それでは、どのように理想のBIを構築すればよいのか。
まず、「データをハンドリングする仕組みを最初に設計しなければならない。BIは、全社的に活用するツールであるべきだ。しかし、上場企業が内部統制やJ-SOX対応を実現するために、人を介したデータの受け渡しを行うBIを導入するには、アクセスコントロールが必須になる。セキュリティコントロールの問題を解消しないとBIは活用されない」と山本氏。
「成長を促すBIは中核に据えるべきだ。情報を統制しながらも、フロントオフィスやバックエンドシステムに対して情報を適切に届ける仕組みを実現すべき。あらゆる部門が仮説/検証のインフラを活用し、経営をデザインするための人を中心としたシステム作りを考慮することが重要になる」(山本氏)
ジールでは、顧客にBIを導入するときに、ビジネス要件と技術シーズを融合し、何度も熟考しながらシステムを設計する。さらに、マネジメントサイクルを意識しつつ、PMの指標であるKPIとリスク管理の指標であるKRIを測るために回すサイクルを同様のコンセプトで設計するアプローチを採っている。
たとえば、多店舗展開の顧客が予算編成したいとき、どのような品目やKPIを使って管理会計していくかといった経験とナレッジを持っており、カテゴリ別に素早くスコープできることは、同社のBIシステム導入における効果の一例という。
山本氏はまた、「顧客に導入すべきフェーズを見極めること。極端に言えば、部長クラスでもデータの管理者としてログインパスワードを所持していることが大切。単純にITの人間をデータ管理者にするとガバナンス面で有効ではなく、融通の効かないシステムになってしまう」と話している。
「シナリオにおけるプロトタイピングを理想のグランドデザインに近づける中で、データ基盤、データセキュリティ、ガバナンス、人を中心とした仕組み作りを平行して進めるアプローチが最適だ。BIを中心に据え、ビジネス要件に合ったマネジメントサイクルを継続的に回す仕組みを構築することは、企業を継続的に成長させる最大の鍵になる」(山本氏)